女子バレー、リオ五輪でメダルは無理なのか?
――ブロックについては? 「ブロックは荒木選手が入ったことで安心感が生まれました。しかし、リードブロック(相手のトスを見て跳ぶ)が徹底されていませんでした。データを利用していたのかもしれませんが、以前はバンチリード(3人が中央に集まって構え、相手のトスを見て跳ぶ)を徹底しているように見えましたが、今回は場合によってコミット(予め予期して跳ぶ)するケースもありました。 アメリカ、オランダなどは、リードブロックを徹底しています。そこでワンタッチをかけられることが、ジワジワと効いてくるのです。長岡選手もそれを嫌がってミスしたシーンもありました。中国も最近はリードブロックを徹底してきています」 ――期待の将来のエース候補、古賀紗理那選手(NEC)がブレイクできなかったことが残念です。 「期待が大きかっただけに、自信を取り戻して欲しかったのですが、その機会がないまま大会が終わりました。イタリア戦では、失敗を恐れたのか、腕が振れていませんでした。大会前の合宿を覗いたときに古賀選手の練習をする姿を見て少し不安を感じていました。これはチーム全体にも言えることでもあるのですが、若い選手は追い込むと萎縮してしまうということで、チームにはあまりピリピリとした緊張感はありませんでした。木村選手も、自分の昔がそうだったように若い選手にはノビノビとプレーして欲しいという方針だったようです。それも大事なことですが、もしかしたらもっと怖さや緊張と向かいあうべきだったのかもしれません。 一方、中国遠征を外された鍋谷選手や、メンバー争いの中にいる迫田選手や石井選手らは、そういう危機感をコート上で出していました。彼女たちは、今大会できっちりと結果を出しています。もっとチーム内に競争意識が必要だったのかもしれません。今回の経験が古賀選手を成長させてくれることに期待します」
――良かった点は? 「ディグ(スパイクレシーブ)です。ブロックとの関係性、位置取りがよかったです。荒木選手、島村選手のブロックに安定感があるので、相手がブロックを避けて打ってくる場面も目立ちました。そこにしっかりとディグに入れていました。決められてもおかしくないようなボールを何本も上げていましたし、フェイントを落とされても、すぐに対応できていました。」 ――木村沙織選手(東レ)の存在感が際立ちました。リオ五輪でも木村頼みになりますか? 「木村選手が神がかり的な活躍でサイド攻撃を決めましたが、あれがなければリオ五輪切符を獲得することもむずかしかったのかもしれません。イタリア戦で一切笑わない姿が印象的でした。 彼女は、あそこまでのレベルにありながら向上心を失っていません。聞くところによると男子の石川祐希選手のスパイクのフォームを参考にしたり、肩の痛みを消すトレーニングに取り組んだりと、努力が結果に結びついています。 全日本の合宿取材に訪れた際、自主トレも含めたすべての練習メニューが終わった後に一人で黙々とレセプションの練習をしている木村選手の姿がありました。私は体育館を出ることができませんでした。それほどの集中力と緊張感を漂わせていました。背中で引っ張るキャプテンでした。それをもっと若い選手には感じ取ってもらいたいですね。もちろん、木村選手の活躍がなければ、リオ五輪でのメダルは考えられません」 ――ここから最終のメンバー選考が待っています。 「心情的には、この苦しいOQTを戦い抜いたメンバーにリオ五輪に行ってもらいたいのですが、経験や勝負強さを持つ江畑選手ら、12人に残る可能性を持った選手もいます。その選考の競争も含めて、リオ五輪までにやるべきことはたくさんあります。ただ、課題さえ克服すれば、1次リーグでは上位で決勝トーナメントに進むことのできる可能性もあるのです。もうひとつの組には強豪が揃っていますが、上位で抜ければメダルの可能性が高まるのです。現状のままでは厳しいですが、メダル獲得の可能性は十分にあるのです」