女子バレー、リオ五輪でメダルは無理なのか?
――オランダ戦ではセッターとして田代佳奈美選手(東レ)がアピールしました。 「存在感を示しました。おそらく経験を積ませることと、どれだけ上げることができるかの見極めも兼ねた起用だったと思いますが、初のシニア代表の試合で緊張したのか、最初はどうなるんだろう? と心配しました。しかし、セットが進み慣れてからは、積極的にミドルの攻撃を使うなど宮下選手との違いをアピールしていました。欲を言えば、もっと荒木選手を生かして欲しかったのですが。 今大会は、韓国戦やタイ戦の苦しい場面でセッター交替でリズムを変えるケースがありませんでした。タイがセッターを替えてきた戦術とは対象的でした。韓国戦やタイ戦で田代選手を使っても良かったでしょうし、リオの本番では田代選手を宮下選手と併用するオプションも必要になってくるのではないでしょうか」 ――課題のサーブは、ドミニカ戦以降、改善していませんか? 「サーブは本来、日本の武器です。オランダもサーブで乱すと怖くありませんでした。サーブの成功率を高めることもリオ五輪でメダルを獲得するためのポイントだと思います。今大会でサーブの得点率ランキングのトップ10に日本選手の名前がありません。ようやく16位に木村選手の名前が出てくるくらいです。リオ五輪でも、こういう状況が続くと厳しくなります。 サーブの成否はメンタルが占める部分がほとんどです。長岡選手はオランダとの競り合いの中で、ジャンピングサーブを決めました。あれをリオの本番でできるかどうか。サーブの個人ランキングのトップ10に3人以上が入っているようにならないと厳しいでしょう」 ――レセプションについてはどうでしょう。木村選手が素晴らしい仕事をしましたが、リベロのプレーをどう評価しますか? 「佐藤あり紗選手が、韓国の強いサーブに崩されました。実は、佐藤あり紗選手は手首を怪我していてオーバーでのセットができませんでした。リベロで日本一ハイセットの上手なプレーヤーが、それを生かせず、苦手なアンダートスで対処しなければならなかったことには、葛藤があったのだと思います。ただ、ゆっくりと、できるだけ高くファーストタッチを返すことを意識していました。私は、これが非常に重要なポイントだと見ていました。 できるだけネットから離れて開き、助走を長く取った方がスパイクの威力が増します。オランダのスパイカーも、開こう、開こうとしていました。日本はまだそこまでいけていないのですが、佐藤選手が高く上げようとするので、スパイカーに開く時間、余裕が生まれました。 木村選手も自分が開く時間が欲しいタイプなので、そういう上げ方を心がけています。日本では、中高校でファーストタッチを低く、速く、と教えているチームが少なくありません。しかし、世界基準は、むしろ助走して高く飛べる時間を作ることに向かっています。その違いに戸惑う選手が少なくないのですが、リオ五輪の先を考えると、女子バレーの底辺を支える中高校の指導者が、世界基準を把握して指導していかねばならないでしょう」 ――なるほど。長岡望悠選手(久光製薬)のスパイク決定率45パーセントは物足りませんか? 「いえ、勝負どころでしっかりと決めていました。成長を感じました。“自分がやらねば”という自覚の証だと思いました。日本の攻撃が単調で、ブロックマークが簡単な状況で、これだけ決めれば十分です。繰り返しますが、ミドルをもっと使えていれば、彼女の決定率も高まったでしょう」