向坂くじら&百万年書房・北尾修一の文芸をめぐる対話。『とても小さな理解のための』に見る「詩」の尊さ
「詩と詩が影響し合わないように」。掲載順や章立て、装丁などから見る詩人&編集者のこだわり
─新装版を出すにあたってとくにこだわったポイントはありますか? 向坂:私より、どちらかというと北尾さんのほうがいろいろこだわりがあるんじゃないでしょうか? 北尾:いやいや、そんなことは。新装版では、収録する詩の数を大幅に増やしたのですが、増補しようって言い出したのはくじらさんでしたよね? 向坂:そうでしたっけ? まあ、せっかく出すなら同じものをつくっても、と思って。あと、しろねこ社版は2022年夏までにつくった詩が入っているのですが、いまとは少し違う問題意識や方針に基づいてつくられている作品も多いんですよね。だから、プラスアルファでいまの自分としての作品も入れたいと思いました。 装丁などは北尾さんにお任せして、素晴らしい仕上がりにしていただきました。 北尾:ブックデザインに関しては鈴木成一デザイン室と自分でやらせてもらいました。ただ、タイトルはしろねこ社版から変えませんでした。同じタイトルだとややこしいかな?とも思ったのですが、『とても小さな理解のための』を超えるものがなくて。 向坂:しろねこ社版のときは、章立てや詩の掲載順、カバーまで自分でやったんですよ。WordとPower Pointを駆使しました。 北尾:本文の組版もできる詩人(笑)。なかなかすごい話です。詩の掲載順は、しろねこ社版のときにくじらさんが決めた並びをほとんど踏襲しています。自分なりに入れ替えてみたんですが、くじらさんのつくった並び順にはかなわなかった。 向坂:一応頭から読むことを想定しているので、並び順は大事です。もちろんバラバラに読んでもらっても良いのですが、私としては、それぞれの詩の意味が宙づりになるほうが良いんですよね。別の詩であっても、並ぶことによって影響し合ってしまうこともあると思っていて。そこを、あえて流れを切っていくというか、意味が接続しすぎないような並びにしたかったんです。