仮設住宅の水害リスク、かさ上げ・広域避難で備え…3~5m浸水想定の地域では「祈るしかない」の声
全国で水害リスクを抱える応急仮設住宅の建設候補地が少なくないことが、読売新聞の調査で明らかとなった。災害級の大雨は頻発化し、地震と水害が立て続けに起きる「複合災害」リスクは増している。石川県奥能登地方での被害を受け、自治体の危機感は高まっている。(野崎達也、柳沼晃太朗) 【写真】プライベートで炊き出し準備の市長、SNS大反響に困惑
候補地の3分の2が「洪水浸水想定区域」にある福井県。県の担当者は「災害リスクのある場所での建設に備え、住民にしっかり避難情報を伝達できるよう市町との連携を検討していく」と危機感を強める。
中でも福井市は、水害リスクが高い地域だ。三つの大きな河川に囲まれ、2004年7月の「福井豪雨」では市街地の広範囲が浸水した。福井豪雨などを受けて作られた市のハザードマップでは、候補地35か所のうち18か所が「浸水1メートル以上」と想定されている。
3~5メートル浸水するとされる候補地の一つ、「山奥公園」の近くに住む男性(84)は「ここで暮らすとなったら、大雨が降らないよう祈るしかないのでは」と不安を募らせる。
市危機管理課の村中紳一・副課長は「リスクを織り込んで仮設を建設するか、別の手段を選ぶか。住民の要望も聞きながら対応を検討したい」と話す。
基礎を50センチ高く
奥能登地方では、平地が限られる中、避難生活を早期解消するため洪水浸水想定区域などにも仮設住宅が建設された。その結果、9月の記録的大雨で計6団地222戸が床上浸水し、多くの被災者が再び避難所暮らしを余儀なくされている。
浸水した仮設住宅は年内に修繕を終え、入居可能となる見通しだが、石川県は「いざという時に円滑に避難できるよう、体制を整備する」と警戒を強める。
奥能登地方のように災害リスクのある場所に建設する事態に備え、他県の自治体も検討を進めている。
新潟県や熊本県などは、土地や住宅の基礎の「かさ上げ」を検討。新潟県村上市では22年8月の大雨で、50センチの洪水浸水想定区域に仮設住宅を整備した際、コンクリート板を重ねて基礎を50センチ高くしたという。