仮設住宅の水害リスク、かさ上げ・広域避難で備え…3~5m浸水想定の地域では「祈るしかない」の声
区内の7割が海面より低い「海抜ゼロメートル地帯」にある東京都江戸川区。首都直下地震に備え、仮設住宅の建設候補地23か所を確保するが、大半は大規模水害で水没する恐れがある場所にある。区の担当者は「仮設住宅の入居者も区外へスムーズに広域避難できるよう、体制を整えておく必要がある」と話す。
「みなし」も対策
仮設住宅には民間賃貸住宅を借り上げる「みなし仮設」もあり、活用を検討する自治体が増えているが、建設型と同じく災害リスクへの備えが不可欠だ。
大阪府は、建設候補地866か所の約半数(392か所)が洪水浸水リスクを抱える。南海トラフ地震では避難者が190万人超に膨れあがる恐れもあることから、府は約45万戸(18年時点)ある賃貸の空き家を「みなし仮設」として活用する方針だ。府の担当者は「みなし仮設についても、水害などのリスクに対し安全を十分に確保できるようにしたい」と話す。
災害時の避難行動に詳しい広井悠・東京大教授(都市防災)は、「気候変動の影響で毎年のように大雨、洪水による被害が発生しており、大地震と水害による複合災害の可能性は決して低くない」と指摘。「地震後に大雨が降れば想定より被害が大きくなり、避難誘導や救助といった行政対応も遅れる恐れがある。そうしたリスクも含めて行政が住民に伝え、早期避難できるよう備える必要がある」と指摘する。
候補地、土砂災害警戒区域にも
今回の調査で、仮設住宅の建設候補地が「土砂災害警戒区域」を含むかどうかも47都道府県に尋ねたところ、35道府県が把握し、候補地計1万6548か所のうち1390か所(8%)が区域内だった。
三重県では、約600ある候補地のうち、土砂災害警戒区域の中でも著しい被害が生じる恐れがある「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」が約50か所ある。県の担当者は「候補地の災害リスク状況の調査を行い、候補地の選定方法や活用について市町と対策を考えていく」としている。