<解説>2024年のドラマ界、意外な人気作と新たな動き 視聴者人気と視聴率にギャップも
7月期は、目黒蓮さん主演で、脚本の生方美久さんら「silent」チームが再集結した「海のはじまり」(フジテレビ)が大きな反響を集めた。特にTVerの番組再生数ランキングが顕著で、放送3カ月のシリーズ累計再生数で7148万再生を記録。これは、放送話数に違いはあるものの、それまでの年間最高だった「不適切にもほどがある!」(3342万)の倍以上、それまでの「VIVANT」(TBS)、「あなたがしてくれなくても」(フジテレビ)の5481万を上回るという驚異的な数字で、連ドラ歴代首位となった。
また、深夜帯で放送された松本まりかさん主演の「夫の家庭を壊すまで」(テレビ東京)のヒットも新しい動きとして注目された。赤石真菜さんの同名ウェブマンガが原作で、内緒でもう一つの家庭を持っていた夫に復讐するため、松本さん演じる“サレ妻”の主人公が、復讐を決意するが…というストーリーで、どんでん返しの重なる緊張感のある展開も相まって、テレビ東京の見逃し配信再生数の記録を次々と更新する快挙を記録。近年支持を集めていた“不倫”“復讐”の要素を持ち合わせたドラマの台頭を示す現象ともいえるだろう。
10月期は視聴者の反響と視聴率にギャップが生じた作品が見られた。脚本・野木亜紀子さん、監督・塚原あゆ子さん、神木隆之介さんの一人二役で、石炭採掘で発展した長崎県・端島(軍艦島)と現代の東京を舞台にした70年の愛と友情、家族の物語を描いた巨編「海に眠るダイヤモンド」(TBS)は、裏番組にプロ野球の日本シリーズや、M-1グランプリがあったことも影響して世帯視聴率としては2桁を下回ったものの、あらすじの紹介記事や関連記事はいずれも好調だった。
松本若菜さんが“托卵妻”を演じて話題を呼んだ「わたしの宝物」(フジテレビ)も視聴率と、視聴者の反応に乖離があった作品だった。夫以外の男との子供をこっそり育てようとする“托卵妻”という賛否の分かれるテーマだったが、松本さん演じる妻の悲哀と苦悩、モラハラ気質だったが子供が生まれて大きく変わる夫、自分との子供が生まれたことを知らなかった不倫相手、クセの強い周辺の人物たちというさまざまな要素が複雑に絡み合ったことで、SNSではさまざまな意見が飛び交ったものの、作品自体への評価は高かった。
TVerなどでの見逃し配信や各種配信サービスの普及に伴い、ファンの付きやすいドラマは数年前に比べて作品数が劇的に増加している。そんな中、作中のせりふ「もうええでしょう」が流行語大賞のトップ10に入った「地面師たち」や、往年の女子プロレス界を映像化した「極悪女王」(ともにNetflix)が広く話題になるなど、配信ドラマの存在感が地上波ドラマをおびやかしつつあるほか、1本3分のショートドラマも話題になるなど、新たな動きも目立った2024年。地上波ドラマを取り巻く状況が変わる中、2025年はどんな年になるのか。ターニングポイントになるのは間違いなさそうだ。(MANTANテレビ班・T)