「物を抱きしめて持ち上げる…」トヨタが生んだ“ふわふわロボット”に海外メディアが大注目
手だけで持とうとするロボが多いが…
ソフトなボディは安心感をもたらすだけでなく、こうした実用的なメリットを生み出した。TRIで全身操作分野の技術リーダーを務めるアンドリュー・ボーリュー氏は、「グリップ力の高いスキンを採用することで、胸に近い位置で物体を抱えることが可能になりました」と語る。 「これにより、重い物体をより少ない力で持つことができます。驚くことに、重量のあるロボットでさえ、手だけを使おうとする例はよく見かけます。やり方を変え、体全体を使うだけで、両手で掴める以上のものを運ぶことができるのです」と利点を強調している。 もっとも、単にボディを柔らかくしただけでは、適切に物を運ぶことはできない。実はPunyoの愛らしいボディの内側には、無数の触覚センサーが埋め込まれている。これらを通じ、抱えている物体がどのようにボディに接触しているかを検出。物体の姿勢や生じている圧力をリアルタイムで把握する。 胸の部分には、グリッド状に並んだ20個の触覚センサーを配置。接触面の圧力や振動を検知し、抱えている物体の位置を分析している。 また、手先にも状況判断の仕組みが組み込まれている。Punyoは指先を持たず、両腕の先端は柔らかな半球状だ。物体にフィットするよう、伸縮性の生地を空気圧で膨らませた。この手先部分は、外から見る限りは白の単色だ。だが、内側には数百点にのぼる黒のドットが描画されている。 手の内部に仕込まれた高解像度カメラを使い、物体を持った際のドットの動きを追跡。各ドットの位置の変化をもとに、接触している物体の形状や正常にグリップできているかなどを判断する。人間のような運搬動作を、こうしたセンサー類が支えている。
柔らかなハグは格別の安心感
なお、身体が柔らかいことで安全性も向上している。ほかにも、思わぬメリットが生まれたようだ。情報工学分野の標準化団体であるIEEEが発行するIEEEスペクトラム誌の取材に、プロジェクトでHRI(人間・ロボット間インタラクション)の技術リーダーを務めるケイト・ツイ氏が応じている。 「Punyoに抱きしめられるのはどんな感じがしますか?」との質問にツイ氏は、「Punyoは(人間とのコミュニケーションを重視して作られた)ソーシャルロボットではありませんが、ハグをすると驚くほど多くの感情が伝わってきて、とても心地よく感じます」と回答している。 「Punyoのハグは長く、長い間会っていなかった親しい友人からぎゅっと抱きしめられるような感じです」 もしも将来、ごくふつうの家庭にお手伝いロボットを導入することが一般的になったとしたならば、ソフトなロボットの方がたしかに親しみを持ちやすいかもしれない。
文:青葉やまと