裁判の傍聴席が満員「この人たちはどこから来たのか?」違和感から重ねた取材 地裁に通い続け、尾行、質問状、記者会見。粘り強く不祥事を明らかにした2か月半
市教委は、動員はあくまで「被害者側からの要望で行った」もので、いずれの事件でも市教委側から提案はしていないと強調。一方、当事者の氏名や、場合によっては犯行場所なども秘匿される公判で、具体的にどのような内容について被害者特定につながる恐れがあったのかという質問には明確に答えず、「結果的に加害者を守っているように見えてしまうかも知れないが、被害者側の視点に立って対応している」などと、理解に苦しむ釈明を繰り返した。 今後、弁護士の検証チームによる調査で、経緯や適法性について詳細な検証がなされることを願ってやまない。 ▽動員方針撤回という結末と今後に寄せて 性犯罪事件では、警察は摘発時の発表を控えたり匿名発表としたりする場合がある。社会の中で事件が認知され得る機会は公判のみ、というケースも少なくない。裁判が公開されていることには、第三者による事案の検証や再発防止に向けた情報収集を可能にするなど、さまざまな観点から大きな意義があることを、取材を通じ改めて強く感じた。
社内で協力してくれた同僚がいたことや、他社の女性記者らも取材しており同様の問題意識がうかがえたことは、取材を進める上で大きな推進力となった。感謝したい。 一方、忘れてはならないのが、報じる上で被害者側に生じる不利益だ。過去、報道を含む情報拡散により被害者や家族が苦しんだ例があることを、報道機関の一員として肝に銘じなければならないと思う。今回の報道に当たっては、被害者側の意向を個々に確認することはできなかったが、事件の詳細を不必要に明かすことのないよう注意を払ったつもりだ。被害者側への配慮を欠かすことなく、再発防止に寄与する事件報道のあり方を模索していきたい。