「価格転嫁で中小企業も賃上げ」政労使のトップが言うようにうまくいく? 最前線に立つキーパーソン4人に話を聞いた
公取委の労務費転嫁指針を小山田氏は高く評価する。「指針は非常にシンプルで分かりやすい。価格交渉のハードルをどんどん下げることが大事だ」と述べ、交渉の活発化に期待を寄せた。 【インタビュー(4)学識者】春闘について積極的に発信する立教大の首藤若菜氏 立教大経済学部教授の首藤若菜氏は労働経済学が専門で、春闘や物流2024年問題に詳しく、政府の審議会などで積極的に発信してきた。 物価上昇は賃金の伸びを上回り、国内消費は低迷が続く。首藤氏は需要拡大に向け、持続的な賃上げが重要となるとの見解を示す。 ▽古い慣習を変える追い風が吹いている 首藤氏は2023年春闘をこう振り返る。「大幅な賃上げを実現したのは画期的だった。それでも個人消費が伸びなかったのは物価高騰に追いつかなかったためで、不十分だった」 首藤氏は今春闘について「昨年よりも賃上げ率は高くなり、実質賃金がプラスに転じる可能性はある」と予測する。ただ中小企業には目配りが必要になる。「コストの上昇分を取引価格に上乗せする価格転嫁が進むかどうかだ」
現状は厳しく「例えば人手不足が深刻なトラック業界でもほとんど転嫁が進んでいない。交渉を始めると、大企業から取引を止められるとの懸念が根強い」と例示する。 首藤氏は大企業の意識変革を促す。「下請け価格を抑えて自社の利益を確保することだけを考えるのではなく、経済を循環させる視点を持つことだ」。中小企業には「古い慣習を変える追い風が今春闘には吹いている。気後れせずに交渉に臨んでもらいたい」とエールを送った。