GUの米国進出、レッドオーシャンでどう戦う? “ほぼ無名”からZ世代人気をつかめるか
米国では無名に近いGU、今後の課題は
このように、アジアとは異なる戦略で米国のZ世代へのリーチ拡大を狙うGUですが、品ぞろえという点では他のファストファッションに見劣りしている部分があるかもしれません。 例えば、GUの公式Webサイトでダウンジャケットのカテゴリをクリックすると(HEAT PADDED & Pufferのタグ)、アイテムは1つしか表示されません(All Outwearだと複数のダウンジャケットが表示されるため、ウェブサイト内の商品検索性の問題もあるかもしれません)。 一方、SHEINの公式Webサイトで同じカテゴリを検索してみると、5ページにもわたってさまざまなデザインのダウンジャケットの商品が表示されました。 GUのように品ぞろえが厳選されていることは在庫管理やサプライチェーンの円滑運営という意味では強みとも言えますが、SHEINなどのファストファッションと比較するとやや物足りない印象があります。 これは、Webサイトの機能拡充という点にもつながります。ファストファッションとの差別化を図ることは大事ですが、Webサイト上でユーザーの滞在時間を長くするためには多くの関連商品を見せたり、ユーザーレビューや商品を着たモデルや一般ユーザーのビデオなどを表示させたりする機能が大事になってきます。 例えば、著名インフルエンサーが始めたカジュアルブランドのPOPFLEXでは、商品開発の過程や、いろいろなボディサイズのモデルが商品を着たショート動画を商品ページに表示しています。商品のアピールポイントも文章より動画の方が伝わりやすいため、このような施策はとても効果的です。 さらに、認知をいかに広げるかかという課題も存在します。姉妹ブランドのユニクロと異なり、GUは米国市場では比較的無名です。H&M、Zara、FOREVER 21のような既存の有名ファストファッションブランドや、SHEIN、Temuといった新興のデジタル大手がひしめくレッドオーシャンに参入することになるため、ブランドの認知を確立し、ユニクロとの差別化を図るという点でGUの前に高い壁が存在することは間違いありません。 実際、業界の専門家によれば、米国でブランドの認知度を高めるのは「少し苦しい戦い」になる可能性があるといいます。Z世代はTikTokのようなSNSを参考にして買うものを選ぶ傾向があるため、この層へのリーチとエンゲージメントを成功させるには、特にデジタルの領域で効果的なマーケティング戦略が必要とされるためです。 米国ではコロナ以降、運動がしやすくカジュアルで、かつファッショナブルな新しいカテゴリであるアスレジャーカテゴリが伸びています。例えば、アスレジャーカテゴリの代表ブランドであるルルレモンでは、パーカーが1着130ドルほどします。 今まではカジュアルファッション=低価格だったものが、アスレジャーのファッショナブルな要素を取り入れるだけで、2~3倍の価格帯になる可能性もあるのです。このところ、インフレが止まらない米国では低価格で質の高いアパレル商品が買える機会は減ってきました。その中で、GUが日本発の高品質なアパレル商品を比較的低価格で米国の消費者に提供できるとしたら、そこにはマーケットのチャンスがあるかもしれません。