希望の大陸・アフリカ 「今が投資の絶好のチャンス」と信じていいのか?
資源埋蔵量や貿易相手国として、未知数のビジネスチャンスが潜んでいると期待されているアフリカ諸国。その経済成長が今すさまじいと経済紙がこぞって書き立てます。早くからアフリカに目を付けた中国に先手を打たれた日本は、負けじと必死に後を追おうとしています。しかし、「今すぐアフリカに投資すべき」という情報だけで動き出すのは、あまりにも無防備すぎます。アフリカフィーバーはつい最近始まったものではなく、実はここ30~40年の間にもアフリカがもてはやされては、見捨てられるという事態をもう何度も繰り返しているのです。 現在のアフリカフィーバーは本物なのでしょうか? 希望の大陸とも絶望の大陸ともいわれるアフリカが持つ光と影の両面を京都大学大学院および神戸大学大学院教授の高橋基樹さんが解説します。
アフリカの現状と将来は明るいのか?
ここ数年、かつてないほど、アフリカへの関心が高まっている。特に、アフリカの最近の経済成長、天然資源の豊富さ、将来の人口増加を念頭に、この大陸を「最後のフロンティア」「希望の大陸」などと呼び、ビジネス・パートナーとして期待する意見が増えている。うれしい驚きは、アフリカにおけるビジネスチャンスの獲得を目指す人が、グローバルな大企業のトップだけではなく、起業を志す若者にまで広がっていることである。そして、一部の日本のマスメディアでは、お隣の中国がアフリカとの経済関係を深めつつあることを意識して、まるで中国に競り勝つためにアフリカ進出をあおるような報道も散見される。 こうした期待の反面、アフリカに関しては暗い情報も多く飛び交っている。打ち続く貧困と飢餓、罪のない人々を巻き込む紛争やテロ、エイズやエボラ出血熱などの感染症の広がりのニュースから、依然としてアフリカに対して負のイメージを抱く人々も多い。しかも、ここへきて、アフリカの経済成長には急ブレーキがかかっている。 果たして、アフリカの現状と将来は明るいのか、暗いのか、希望にあふれたアフリカと絶望に満ちたアフリカのどちらが正しいのか。 はじめに言ってしまえば、わたしの答えはイエスであり、ノーである。アフリカには、新しい産業の誕生、技術の広がり、民主化、紛争の終息など発展につながる多くの変化がある。その一方で、かつての貧困、停滞、混乱を生み出した要因が残存し、その要因を短期間に除去することはできない。そして、格差の拡大、環境の汚染、他者の排除などの問題も新たに生じている。