【インタビュー】DeNA・T.オースティン 届けたい勝利がある「野球をする上でも生活する上でも、横浜は本当に美しい街だと感じる」
勝利へのフォーカス
T.オースティン[DeNA/内野手]
【ベイサイドに宿る 十人十色の横浜愛】 今季中盤から四番に座り、強力打線の中でも決して欠かすことのできない存在となっている右の大砲。勝負を決める一打はもちろん、積極的な守備、走塁も代名詞だ。個人ではなくチームの勝利にこだわり続ける姿勢は、俗に言う「助っ人」とは一線を画す。背中を押してくれる横浜の声援も受け、熱き志で勝利という恩返しを届ける。 取材・構成=武石来人 写真=幡原裕治、BBM 通訳=後藤向輝(横浜DeNAベイスターズ) 打った瞬間それと分かる一打を放つパンチ力、どんな場面でも全力で取り組みヘッドスライディングを披露したかと思えば、仲間のためにとベンチを飛び出すこともある。T.オースティンを形容するなら“熱い漢”だろう。 2021年にチームの主砲を担った強打者は、3年ぶりに四番に座るなど強力打線の中心で結果を残している。だが、今季ここまでの手応えを聞くと複雑そうな表情で言った。 「今シーズンはここまで良いときも悪いときもありました」 確かに開幕直後、試合中に右太もも裏肉離れを起こし一時離脱していた時期もあった。それでも6月にはリーグトップの8二塁打、17打点、同トップタイの5本塁打、同3位の打率.346で月間MVPを獲得。個人としては満足のいく数字ではあるはずだ。 「個人成績はあまり気にしていないので。それよりも、チームとして現在リーグ4位。私は本当に勝ちたい選手で、チームの勝利、チームの優勝に貢献したい選手なので、それが今少し難しくなっている現状が残念なんです」 粉骨砕身の気概を持ってチームに貢献しようとしていることは知られている。ヒーローインタビューに立てば必ずと言って良いほど「championship」と口にし、シーズン途中に加入した同じポジションを担うM.フォードには自身がオールスターで負傷した直後にもかかわらず横浜スタジアムの土質やポジショニングの注意点を共有した。チームにとってはありがたいことこの上ないが、やはりここまでの献身性は異質だと言わざるを得ない。ではなぜそこまでして「勝利」にフォーカスするようになったのか。現在メジャー屈指の強打者として知られるアーロン・ジャッジとともに、「紳士の球団」ヤンキースで育成を受け、戦っていた経験が大きかったのだろうか。 「もちろんそうした側面はありますが、本当に小さいころから周りの人に勝利の大切さを教わってきました。リトルリーグや中学、高校での選抜チーム、マイナー・リーグ、そしてメジャーに上がってからも、です。どのコーチにも勝利については口酸っぱく言われてきました。それが今の私のプレースタイルにつながっているんです」 環境や指導者によって少しずつ完成されていったプレースタイルを今も続けている。では、その思いが湧いてくる理由についてはどうなのだろうか。プロたる矜持(きょうじ)なのか、はたまた自分のため、チームのため、ファンのため、さまざまな要素が考えられる。返って来たのは・・・
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週刊ベースボール