加工用ジャガイモ 2割増 ポテチけん引 産地や品種を前面に
消費の裾野が広がり、需要が伸びるポテトチップス。製菓メーカーは原材料となるジャガイモの安定調達へ、国内産地との結び付きを強める。原料の調達先という関係にとどまらず、産地や品種を前面に出す“芋が主役”の商品展開で、高付加価値化を進める。 【データで見る】加工用ジャガイモの国内生産量 農水省によると、加工用ジャガイモの国内生産は2023年度、60万トンを記録(概算)。作柄による増減はあるが10年で19%増え、20年には生食用の生産量を上回った。 増産を促したのが、国産の加工用ジャガイモの7割を占めるポテトチップス。商品の多様化が消費拡大を促し、原料供給が追い付かない状況だ。
国産でブランド
多様化の先駆けが、製菓メーカーの湖池屋だ。16年以降、高付加価値路線へとかじを切り、ブランドを再構築してきた。「価格訴求で代わり映えしない商品が並ぶスナック売り場に風穴を開ける」(マーケティング本部)挑戦に踏み切った。 新ブランドの柱の一つが、「ピュアポテト」。“圧倒的じゃがいも感”と銘打ち、芋の味がしっかりと味わえる厚切りが特徴だ。年間で20億円を売り上げればヒットとされる業界で、発売初年の18年に22億円を達成。20年には35億円を記録し、以降も前年比2桁増のペースで伸び続ける。おやつ以外に、おつまみやご褒美としても楽しめるとして、消費の裾野が拡大。「接点が薄かった女性や高齢層にも手に取ってもらう機会が増えた」(同) ピュアポテトの数量限定シリーズで、「ブランド芋くらべ」も展開する。北海道の5JAと協力し、芋の品種とJA名を商品に冠する。「多くの品種がブランドとして認知されている米やイチゴのように、芋の個性を伝える」(同)狙いだ。 発売6年目の今年は商品を刷新し、14日から順次売り出す。うま味が強い「きたかむい(JAようてい産)」にはイカの塩辛バター、クリーミーな「ひかる(JA士幌町産)」にはポテトサラダといった具合に、「品種の特長を生かした味付けとし、1品の料理として打ち出していく」(同)。
産地と結び付き
湖池屋は、本州の産地とも結び付きを強める。長崎県では23年9月、生産者や流通業者が「雲仙島原チップ用生産組合」を発足。県ブランド品種「ながさき黄金」の安定供給が目的で、24年は11人が2ヘクタールで生産し、約70トンを湖池屋へ供給した。 24年3月には、「ながさき黄金」の種芋生産を手がけるジェーピーファーム(雲仙市)が、全自動選果機を備えた大型倉庫を整備。安定供給体制を整え、27年に5ヘクタール、175トンの供給を目指す。宮崎洋平社長は「自ら育てた芋が商品となり、高く評価されるやりがいは大きい」と意気込む。(橋本陽平)
日本農業新聞