「2024年問題」の影響、「マイナス」が55.3% 「利益率低下」、「労務管理」の負担が上昇
Q2. どのようなマイナスの影響を受けそうですか?(複数回答)
◇「物流・建設コスト増加による利益率の悪化」が71.4%でトップ 「2024年問題」によるマイナスの影響では、「物流・建設コスト増加による利益率の悪化」が71.4%(2,724社中、1,946社)と、前回に引き続きトップだった。原材料や燃料費アップ、人手不足などの対応に苦慮するなか、「2024年問題」で運賃や作業費などのコストが上昇傾向にあり、さらなる業績悪化を懸念する企業が多い。 次いで、「稼働率の低下による納期の見直し」が22.8%で続き、稼働率の低下で納品スケジュールに支障が出ることを懸念する企業が多い。特に建設業が36.3%(161社)と回答率が高かった。 建設業では、「物流・建設コスト増加による利益率の悪化」が56.6%で最も高い。次いで、「稼働率の低下による利益率の悪化」が44.2%で続き、残業規制によって収益悪化を懸念する企業が多かった。 運輸業では、「稼働率の低下による利益率の悪化」が50.7%で最も高く、全産業、建設業と同様に利益率を懸念する企業が多い。次いで、「労務管理の煩雑化」が50.0%とほぼ同水準で続き、この2項目の回答率が50%を超えた。時間外労働の上限規制が適用され、従業員の勤怠状況をより正確に把握する必要があり、厳格な労務管理が求められている。ドライバーの待遇改善には必要不可欠だが、煩雑化した労務管理業務が負担になっている企業が多いようだ。 「労務管理の煩雑化」は、建設業が42.4%、運輸業が50.0%と時間外労働の上限規制の対象の業界で高く、その他産業の回答率10.4%との乖離が大きい。 ◇ ◇ ◇ 2024年4月から建設業と運輸業の時間外労働の上限規制が適用された「2024年問題」について、「マイナス」影響が発生すると回答した企業は5割以上(構成比55.3%)を占めた。 2024年1-5月の「人手不足」関連倒産(後継者難を除く)は118件発生したが、このうち建設業は30件(前年同期比150.0%増)、運輸業は25件(同66.6%増)と、いずれも前年同期から大きく増加した。慢性的な人手不足に加え、円安や原油高などを背景にした資材や燃料費などの各種コストアップで収益が悪化した企業は多い。さらに2業界とも産業構造で下請け色が濃く、価格や納期などの条件交渉がうまく進まない企業も少なくない。このため、「2024年問題」で今後の見通しが立たず、市場から退出するケースがさらに増える事態も懸念される。 一方、「マイナス」割合を前回調査と比較すると、建設業が69.3%から64.1%に5.2ポイント、運輸業が72.7%から60.4%に12.3ポイント改善した。「2024年問題」への対応が進み、状況が改善した企業もみられるようだ。これまでは下請け側の自助努力に任せてきた側面があったが、発注側でも大手企業などを中心に、効率化や負担軽減への取り組みを進める企業も増えている。 建設・運輸企業の市場退出を抑制し、物流や建設の“クライシス”を防ぐには、産業全体で取り組みを進めることが必要だ。