浅倉カンナ、笑顔と涙のラストマッチ。“純情可憐タックル女子”が駆け抜けた青春の格闘技人生「悔いはないです」
涙と笑顔、そして涙のラストマッチだった。 9月29日にさいたまスーパーアリーナで開催された『RIZIN.48』で、浅倉カンナ(THE BLACKBELT JAPAN)は、スーパーアトム級女王の伊澤星花(Roys GYM/JAPAN TOP TEAM)と対戦。フルラウンドを闘っての判定で敗れた。 【写真】RIZINで一世風靡! 日本女子格界を駆け抜けた浅倉カンナを厳選ショットで特集! 格闘技人生の最終戦で対峙したのは、幼少期から面識のある同世代の伊澤。言わずと知れたRIZINの女王だが、「今までの試合は負けたらやばいというか、メンタル的にもしんどかった。ですけど、今回はフレッシュな状態で、気持ちよく戦える」と語っていた浅倉は、言葉通りに何かが吹っ切れたかのように堂々と打ち合った。 それでも絶対女王の壁は分厚かった。2回途中から伊澤にコーナー付近で寝技戦に持ち込まれて主導権を握られる。どれだけ返しても、二の矢、三の矢が出てくる。容赦ない攻撃を前に明らかな防戦を強いられたが、浅倉は耐えた。そして、最終3回の終盤には打撃で反撃。効果的な一打は繰り出せなかったが、「自然に動いた」と踏みつけなど果敢に攻める姿勢は見せた。 開会式時点で涙を流していた浅倉は、試合終了直後にリング上に仰向けになって顔を覆った。そして、ほどなくして実施された引退式でふたたび涙。自らを格闘人生に導き、支えになってきた家族を目の前にし、感情が抑えきれないようだった。 幼稚園の年長時からレスリングに打ち込み、高校1年時に総合格闘家に転身。若くして格闘技漬けの日々を送り、弱肉強食の世界に飛び込み、いつしか「純情可憐タックル女子」の異名を授かった。キャリア戦績は28戦20勝(8敗)とド派手なものではなく、苦しい日々もあった。 それでも青春を捧げたことに悔いはない。試合後に「最高の格闘技人生でした」と笑顔で振り返った浅倉は会見でこう語った。 「正直、意識が遠くなるほど苦しくて、ヤバいと思ったんですけど、その瞬間にこのままじゃ終われないと思ってしのげました。終わった瞬間は勝ちたかったので悔しかったですけど、この試合まで期間で全力で格闘技をやってきたので、悔いはないです」 最後に生き様を見せつけた26歳。引退後のプランは不透明だが、「化粧をちゃんとして出かけたいです」とはにかむ表情は充実感に満ちているように見えた。 [取材/文:羽澄凜太郎]