寒い時期だけの絶景! 環七地下の「調節池」見学ツアー…洪水からまちを守る巨大トンネル潜入
異常気象・気候変動による「最悪のシナリオ」を防ぐ
隅田川の西部における洪水対策の肝となっているのが、インフラツアーで実際に見学できる地下トンネル式の調節池だ。昭和47年(’72年)に堀込み式の調節池が最初に完成し、これまでに都内では27ヵ所の調節池が稼働しているという。 調節池が完成し稼働したことで、特に調節池下流部での被害は抑えられているのだそう。 「昭和41年(’66年)の台風4号(総雨量303mm、時間最大33mm)では約4万棟の浸水被害がありましたが、平成29年(’17年)の台風21号(総雨量345mm、時間最大53mm)では河川からの溢水はありませんでした。これは、整備した調節池等がしっかり機能したものと考えています」 地下調節池のおかげで、都民の生活の安全は守られているが、決して万全とはいえない。地球温暖化が原因のひとつとされる異常気象に、化石燃料の燃焼を発端とする気候変動など、私たちを取り巻く気象環境は着実に悪化の一途をたどっている。 そのスピードを少しでも遅くしようと、これまでに京都議定書やパリ協定が組まれ、昨年のCOP28では脱炭素化を加速させることが同意された。 「世界の平均気温は、1850~1900年を基準に1.1℃上がっており、2100年にはさらに0.9℃上昇するという説が有力視されています。それを避けるために、各国で気候変動対策としてSDGs達成を目指して色々な取り組みを実施しています。しかし、世界的な不安材料は様々ありますので、言い換えると、2℃上昇まででストップさせることを目標に世界中で活動しているというところです。 さらに、世界の平均気温が2℃上昇すると、降水量は1.1倍に増え、海水面は2100年には最大で60cm上昇すると考えられています。温暖化によって台風も強大化すると見られているので、東京都にとって水害対策は重要なのです」 東京都では、将来の気候変動に伴う降雨量の増加や海面上昇、台風の強大化による高潮に対して、河川からの溢水を防止することを目標にした「気候変動を踏まえた河川施設のあり方」を昨年末に公表した。あり方では、気候変動を踏まえて洪水・高潮対策の目標整備水準を引き上げ、対策強化の方針を示すとともに、更なる対策のレベルアップとして、洪水対策では地下トンネル式調節池を活用した地下河川や、調節池のネットワーク化を新たな整備手法に追加した。