眉間のシワが深い人は要注意! そのストレスが「耳鳴り・難聴」の元凶【40代から増える「耳鳴り・難聴」に要注意! ③】
これまでお年寄りの不調だと思っていた「耳鳴り・難聴」。今や子どもから若い層にも広がっている。特に40歳頃から自覚する人が増えてくる。その原因のひとつが過度なストレスだという。それはなぜなのか? どんな人が危ないのか? 耳鼻咽喉科医で医学博士の石井正則さんに伺った。
耳の不調はストレスによる脳の疲れで悪化する
「難聴の直接の原因は、音のセンサーである内耳(ないじ)にある有毛(ゆうもう)細胞の脱毛です(※詳しくは第2回<働き盛り世代に急増! ストレスが原因のふたつの難聴とは?>参照)。 さらに、脳が疲れているとその症状が悪化します。耳鳴りも同様です。よく『耳鳴りがして眠れない』と訴える患者さんがいますが、実はその逆で、眠れないことで脳が疲れて、耳鳴りの原因になっていることもあります。 そのメカニズムは自律神経の乱れです。この自律神経を調整しているのが、中枢性自律神経ネットワーク(Central Autonomic Network)、略してCANです。CANは脳の広い範囲を網羅していて、ストレスなどによる不快な情報を得ると興奮する特徴があります。 日々のストレスを上手に発散できずにいると、CANが興奮しすぎて、交感神経が敏感に反応するようになります。すると、すぐにイライラしたり、落ち込んだり、不安になったりという心理状態になります。 こうした状態を避けることが、耳の健康を守ることになります。その第一歩が『自分のストレスに気づくこと』です。それだけで、ストレスレベルはかなり下がります」(石井先生)
「眉間のシワ」「帰り際の質問」「否定から入る」「肩でつくため息」はストレス過多状態
自分のストレスに気づいていない人がとても多いそうで、そんな人でも簡単に自分のストレスに気づく方法があると石井先生。それが次の4つのサインだ。 ◆サイン1 眉間のシワ 「私はこれをベートーヴェンのシワと呼んでいます。精神神経科の世界では、慢性的なストレスを抱えている人やうつ病の人によくできるといわれています。ストレスと眉間にシワを寄せる筋肉が連動しているからです。 ベートーヴェンは作曲家でありながら、30代には重度の難聴に苦しんでいたといわれています。そのストレスが深い眉間のシワになったのかもしれません」 ◆サイン2 帰り際の質問 「どういうことか、私が時々経験する例で説明します。診察が終わった患者さんが、『そういえば先生、〇〇はどうなんでしょうか?』というように、いったん終わったと思った帰り際に、何度となく質問を繰り返して帰らないのです。 これは、ストレスが強すぎて精神的に追い込まれている精神状態の表れです。私はこれを、昔のドラマにちなんで『刑事コロンボ現象』と呼んでいます」 1970年代のアメリカのテレビドラマで、主人公のコロンボが聞き込みを終えて帰ろうとするが、そのタイミングで「すいません。あとひとつだけいいですか?」と戻ってくる。日本の刑事ドラマ「古畑任三郎現象」とも呼んでいるそう。 まさにこのようなことを繰り返す人は、かなりストレスがたまっているというのだ。 ◆サイン3 必ず否定から入る 「相手の発言に対して、『でも、それは…』というように、必ず否定することから入る人がいます。患者さんの診察時でも、私の助言に『でも、それはちょっと』『いや、できません』と即座に答える人がいます。 私はこれを『デモダメゲーム』と呼んでいます。これが口癖の人は自分に自信が持てない、心の不安の表れです」 ◆サイン4 肩でつくため息 「ストレスを感じるとCANが興奮し、交感神経が働いて、心身は緊張します。すると、呼吸が浅く速くなります。その状態が長く続くと息苦しくなるので、それを緩和しようと肩を上げて深い呼吸をします。これが肩でつくため息です。これが出たときには、かなりストレスを感じています」 これらがひとつでもあったら、ストレスで脳が疲れている可能性大! 特に2と3がある人はたいてい1もあるそうだ。これを機に、自分のストレスや脳の疲れを自覚するといいだろう。