万が一アクシデントが起きたら!? 「本当にあった」に学ぶ、登山のリスクヘッジ【vol.08 救助要請編】
管理された公園や施設で行うスポーツとは異なり、自然のなかで活動する登山などのアクティビティには、リスクがつきものです。想定外の天候急変や沢の増水、転倒や滑落、落石、道迷いもあるかも? フィールドでのリスクを避けるにはどうすべきか。このシリーズでは、筆者が実際に体験した実例も踏まえてリスク回避について解説します。 【写真】正しい救助要請と待機方法を見る(全8枚) 今回は、自力で無事に下山できそうにないアクシデントが起きてしまったときのことを考えてみます。救助要請が必要な場合とは!?
「登山は自己責任」だけど……
人工的な環境である都市部と異なり、自然のままの山の中には、さまざまなリスクが潜在しています。天候によっては、そのリスクがさらに高まる可能性もあります。 登山者は、そんなところへ好き好んで行っているわけなので、その行為が「自己責任」であるのは当然です。しかし、人に迷惑をかけてはいけないと無理をしすぎると、助かるものも助からなくなることもあります。命は助かっても、後遺症が残るような事態になったら取り返しがつきません。 自分やメンバーがケガをしたり、急病になってしまったときに、適切な判断によって、少しでもリスクを低減することが大切です。
自力下山ができない状況とは?
例えば、山道でうっかり転倒し、足にケガをしたとしましょう。軽いねん挫で、テーピングなどで固定して歩ける程度なら、仲間が手助けをしながら、自力で下山できるかもしれません。 しかし、ケガにしろ、急な体調不良にしろ、本人が自分で歩けない場合、それが大人であれば、仲間だけで無事に下ろすのは難しい場合が多いと思います。 また、ハチに刺されたり、ヘビに咬まれたりした場合、自力で歩かせると、症状を悪化させて危険な状態になる場合があります。ずいぶん前のことですが、筆者がスタッフとして引率していた登山教室の山行で、受講者の一人が転んで、足首を傷めました。 軽く転倒しただけなので、「どうせ捻挫やろ」と思ったのですが、本人が非常に痛がるので、やむなくスタッフの男性が交代で背負って降りることになりました。事故者は小柄な女性で、屈強な男性スタッフが複数名いたのは幸いでした。 なんとか登山口まで下ろして、タクシーで病院へ行って診察してもらったところ、骨折でした。 もしも、無理に歩かせようとしていたら(歩けませんが)、悪化して大変なことになったかもしれません。 外傷でも、病気でも、医師がいないところで、勝手な判断で軽く見てはいけないという事例です。