全盲の大学1年生、賃貸探しは困難だらけ…。一人暮らし物件20件以上で拒否、視覚障がい者の住まい探しサポート利用でようやく入居へ
視覚障がいのある人が求める住まいの条件は? 一人暮らしで初めて気づくことも
住まい探しにあたって、Kさんが不動産会社に出した条件は、次のとおりです。 1)家賃(70,000円以内) 2)防犯の面から、1階よりは2階以上 3)ワンルームではなく、キッチンと部屋が分かれた1Kの間取り 4)キッチンがIHコンロであること 5)大学までなるべく近く、乗り換えの少ない経路で通学できること いずれの条件も、視覚障がいの有無にかかわらず、一人暮らしをする女性であれば、ごく一般的な希望条件ではないでしょうか。最終的にKさんは、1Kで管理費込みの家賃が70,000円、大学からは電車1本で3駅隣という、ほぼ希望に沿った住まいを見つけることができました。 「駅から歩いて10分くらいかかりますが、シンプルでわかりやすい道。駅から近くても曲がり角が多いなど複雑な道より歩きやすいことが重要です。IHコンロを希望しているのは、ガスコンロだとこちらから『使わない』と言わないと事故につながることを懸念する管理会社やオーナーさんから入居を断られることが多いことがわかっていたためです」(Kさん)
実際に住み始めて困ったことは、宅配ボックスのタッチパネルだといいます。Kさんは実際に住むまで気がづかなかったそうですが、タッチキーは凹凸がないため、正しく操作できません。 「一度開けられなくなってしまって、たまたま母が訪ねて来たときに開けてもらいました。その後、管理会社に相談したところ、私宛てに届く荷物については宅配ボックスに入れようとすると、あえてエラーが出るように設定してくれています」(Kさん)
視覚障がいの程度も、どのような部屋が良いのかも、人それぞれ
実際に住まい探しをしてみて、Kさんが感じたことは、「視覚障がい者全てを同じように考える人がとても多い」ということでした。 「よく、『一人で大丈夫なんですか』とご心配いただくことがあります。でもどこまで自立して生活できるかは、人それぞれで一括りにはできません」(Kさん) Kさんは新しい住まいでも、スイッチの場所などを最初に教えてもらえれば覚えて使いこなせるし、家事もほぼ一人でできます。Kさんの場合、間取りや設備の特別な配慮等は必須ではないのです。 また視覚障がい者に同行援護サービスを提供しているmitsukiの高橋さんは「視覚障がいのない人が気にする日当たりや景観も、障がいのある人にとってはそれほど気にならない」といいます。 「Kさんのように全く見えない人は視覚障がいのある人のうちの1~2割程度。ほかにも視野が狭い人や、視野があってもすりガラスを通したようにしか見えない人など、症状はいろいろです。職業や収入などと同じように、障がいのある無しはその人の一要素に過ぎません。Kさんのように訓練などによって、できる範囲が改善されることも理解していただきたいです」(高橋さん)
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