インドは国産化?「新幹線輸出」はなぜ難航するのか ベトナムも「自国技術」で高速鉄道建設表明
では「自国技術」という面はどうか。現状で、ベトナムが自国生産できる鉄道車両は貨車・客車やディーゼル機関車に限られており、いきなり高速鉄道車両の国産化は厳しいと言わざるをえない。だが、ここでいう自国技術とは、外国メーカーによるベトナム国内での生産のことだ。 フイ副大臣は「外国からの融資は最小限とし、ベトナムへの技術移転の規定を含めるべきだ」とも述べている。仮に日系企業が現地生産をすれば、STEPでもベトナム側の要望も満たすことはできる。ただ、ゼロからの現地生産となれば、単なる輸出よりもさらなるコストアップとなり、さらに納期や品質を守るには尋常ではない労力を要する。日系メーカー関係者は、そこまでして受注しようとする民間企業はまずないと言う。
そもそも、日本は新幹線システム、特に車両の部分に関しては技術移転を一貫して認めていない。つまり、相手国が「自国技術」を掲げた時点で、新幹線輸出はほぼ不可能となる。前述のような基本設計が出たことからも、日本の新幹線をそのまま輸出するという道は途絶えたことになる。 中国ないしは欧州メーカーの技術協力を仰ぎ、大陸と共通規格の高速鉄道を建設することが予想されるが、ベトナム側が明確な意思表示をしたということは、日本にとって悪い話ではない。足を突っ込んでからでは、後戻りできない。
■建設進むインドは「独自の車両国産化」 一方、円借款プロジェクトとして2017年9月に着工し、当初は2023年開業を見込んでいたインド高速鉄道(ムンバイ―アーメダバード間、約505km)も、価格交渉を発端とする日本、インド両政府間の駆け引きが泥沼化している。 当初、着工が遅れた理由は、ほとんどは用地買収に関わるものだった。これは地元、マハーラーシュトラ州の首長が高速鉄道反対派であったことが理由で、2022年の選挙で州の政権が変わったことでこの問題は解消した。現在の用地買収率は100%に近く、この問題はほぼ解消したと言ってよい。ただ、高速鉄道の高架橋は着々と姿を現しつつあるものの、全線の一斉開業は絶望的な情勢だ。