金メダリスト村田が3回KO勝利で来春WBOミドル級戦にGOサイン!
ロンドン五輪金メダリストで、現在、WBO、IBFの2団体のミドル級で3位にランクされている村田諒太(30、帝拳)が30日、有明コロシアムで“世界前哨戦”として元WBC米国ミドル級王者のブルーノ・サンドバル(25、メキシコ)と対戦、3回2分53秒に強烈な右ストレートを炸裂させてKO勝利した。これで2016年は4戦すべてKO勝利。試合後、世界的プロモーターでもある本田明彦会長は、早ければ来春にも世界挑戦が実現することを示唆した。
元米国王者をロープへぶっ飛ばした。 3ラウンド。プレッシャーをかけられたメキシコ人が苦し紛れに左ジャブを出したタイミングにあわせて右を顔面に叩き込むと、19勝1敗1分のキャリアを誇るサンドバルは、もう立っているだけで精一杯。村田にしがみつこうとして、ほどかれ、そのままダウン。レフェリーはスリップダウンをとったが、ダメージはひどく完全に足にきてしまっていた。四つんばいになって何度、立とうとあがいても立ち上がることができない。 「ジャブを受けたときにパンチがあるなあと思った。でも、右は見えていた。パンチがあるって言っても、まあ僕の方がありますけどね(笑)」 1ラウンドは両手でブロックを固めたまま前に出て右のボディストレートで突破口を開こうと試みた。左で距離をはかって強引に右を振り下ろして決めにかかった。力んでいるのが見てわかった。だが、インターバルで、田中トレーナーから「距離が近い。半歩下がってみようか」とアドバイスを受け、半歩下がり、ジャブを軸にボクシングを組み立て直す。「それでジャブが当たり始めた」。修正を施しながら、分厚い壁のようなガードでプレッシャーをかけて追い詰めて右で仕留めるという“村田スタイル”に見事に、はめこんだ。 「ガードの固さと右の威力。それをこの4戦で証明できたかな」 これで4連続のKO、TKO勝利である。 試行錯誤を繰り返しながら、やっと自らの長所を再確認し、どんな相手に対しても、微調整をしながら“村田スタイル”と呼べるものをリング上で表現できるようになった。 だが、2015年5月1日、大田区総合体育館でWBO世界ミドル級14位のダグラス・ダミアオ・アタイデ(ブラジル)と対戦して以来、1年7か月ぶりの凱旋試合に「お客さんの目が気になって緊張していた」という。 「試合前に緊張して、人前で殴り合いを見せてお金をもらう。一体、俺は何をやってんやろうと思うこともある。でも、そういう道を選んだんやろう。じゃあ、テッペンまで上りたいやん、とも思う。試合の結果も、相手もコントロールできないけれど、自分の気持ちだけはコントロールできる。じゃあ、強い気持ちで戦おう。それだけを意識していた」 先日、NHKの番組で哲学者と対談をしていたが、このボクサーは、元々、哲学的な自問自答を繰り返し、考えすぎるくらいに考え、結論を自らの内側に落としこみ、戦う理由に加えるような作業をしてきた。つまるところ最後は本能に帰趨するのだが、そこに至るまでの心の作業がちょっと他のボクサーとは違うのである。