「歯を磨くことも苦痛に」 1000人以上を診てきた医師と患者に聞く新型コロナの後遺症とは
後遺症患者の悩みとは
--患者さんの後遺症の悩みで一番多いものは何ですか? 平畑院長: 働けないというのが一番多いと思います。当院の500~600人の患者さんのデータを見ますと、十数人は解雇、もしくは退職に追い込まれていますし、200人近い方が休職になっています。後遺症で当院にかかられている方の6割以上が仕事に何らかの影響が出ているという状況です。 --今後、改善すべき課題はどのようなことでしょうか? 平畑院長: やはり国の方で「コロナには後遺症がある」ということを公式にアナウンスしていただきたいと思っています。例えば、ホテル療養した後に、後遺症の案内はなく「あなたは治りましたから出て行ってください」というように言われてしまうのですけども、療養が終わった後に、非常に強い倦怠感等を訴えられる方が多いわけです。 頑張って働くと、悪くなってしまうことが非常に多いのが後遺症の特徴なので、働くことでだるくなってしまう人は、悪化させないために絶対に休まないといけないです。そういう方々はまず会社に伝えて、休ませてもらうということが大事です。その時に必要であれば医師にかかって、診断書を書いてもらうということも必要になってくると思います。 「後遺症でこういう症状が出ることがあります」ということを紙一枚で構わないので国からアナウンスしていただけるだけで、後遺症に悩む方々は会社に相談しやすくなります。まず国の方で「コロナの後遺症は起き得る」ということを罹患者の方々に伝えていただけたらと思っています。
「病は気からではない」--後遺症に悩む患者に聞く
新型コロナ後遺症に悩む中村さん(30代女性)から話を聞くことができました。中村さんは2020年11月中旬に新型コロナに感染し熱と倦怠感に襲われましたが、約2週間で回復しました。その後、気になる症状はありませんでしたが、回復から約3週間後に仕事で負荷の高い作業を行った翌日から「身体が鉛になったような倦怠感」と、頭に霧がかかったような状態(ブレインフォグ)が発生。その激しい倦怠感と筋肉痛は2カ月たった今でも続いています。 <中村さんの現在の症状> ・歯磨きや、カーテンの開け閉めといった、ごく軽い日常的な動作の後に、動悸や息切れが発生。治まるのに数十分から数時間かかることも ・激しい倦怠感と筋肉痛が長時間発生。その間は寝たきり状態に ・長く続く微熱 中村さん: 何もできずに伏せっている時が一番つらいです。痛み止めもこれ以上飲むことができず、ただただ過ぎ去るのを待つのが本当につらいです。シャワーは週に1回程度。自分で髪の毛を洗うことが難しいので、同居するパートナーや訪問介護士にシャワーの介助をしてもらっています。 もともとは福祉関係の仕事に従事しており、ハードワークもこなせる体力に自信がありました。今は、その仕事ができないことが精神的に一番つらいです。 後遺症患者の様々な症状やニーズに合わせた制度や支援がすぐにでも必要だと思います。私はたまたまパートナーや友人に恵まれ、助けてもらうことができましたが、一人暮らしの人のことを思うと胸が痛いです。また、ご家族に「甘えだ」とか「後遺症なんてない」とか「気の持ちようだ」というふうに言われて傷ついている人たちがたくさんいると聞いています。後遺症は「病は気から」とか、「気の持ちよう」ではありません。もし今つらさを感じている方がいたら、すぐに医療機関に相談してください。感染後、ホテル療養等が終わられた方も、充分すぎるかなと思うくらいに安静にして様子を見てほしいです。 誰にでも感染するリスクがあること、重大な後遺症が残る可能性があることを知ってほしいです。同じ思いをされている方はどうか使える制度を使って、人に頼って、自分を責めないで過ごしてほしいと自戒を込めて思います。