「歯を磨くことも苦痛に」 1000人以上を診てきた医師と患者に聞く新型コロナの後遺症とは
言語に絶する倦怠感
平畑院長によると新型コロナの後遺症では、倦怠感の他に、気持ちの落ち込みや、息苦しさ、身体の痛み、脱毛など様々な症例が見られると言います。「思考力の低下」では、言ったことを覚えていない、言われたことを思い出せないなどの症状のほか、頭に霧がかかったような感じがする症状(ブレインフォグ)を訴える方も多くいるそうです。 --倦怠感の原因は? 平畑院長: 倦怠感の原因として考えられているのは、新型コロナに感染した後、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群という病気にだんだんと移行してしまう方がいらっしゃることが分かっています。全員がなるわけではなく一部の方だけなのですが、それが非常に強い、言語に絶するきつい倦怠感を起こしてしまう病気なんですね。その筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の傾向がある方が、そういった強い倦怠感を呈してしまうということになります。
感染時に軽症でも後遺症が発生
--新型コロナ感染時の重症度は後遺症の発症率と関係はあるのでしょうか? 平畑院長: 実は関係がないと考えています。当院の患者さんのほとんどは軽症だった方、もしくは無症状感染だったけれども、後遺症だけが出てきたという方がいらっしゃるんです。また海外の文献にも、「最初の症状の強さが後遺症にどういう影響を与えるか」という研究がありますが、「重症でも軽症でも変わらない」という結果が出ています。
数カ月後に急に後遺症が出ることも
--後遺症はいつ発症するのでしょうか? 平畑院長: 新型コロナ感染時に症状が出た後、つながって後遺症が出ている方が一番多いのですが、全く症状がない期間が3カ月程度あった後、強い運動をした後に急に後遺症が出てきてしまうという方もいます。最近のWHO(=世界保健機関)の見解でも「半年以内に出てくることがある」という言い方をしていますので、感染してから半年は後遺症が出てくる可能性があると考えていただいた方がいいと思っています。
新型コロナ後遺症の特徴
--後遺症/後遺症疑いの人が気をつけたほうがいいことは? 平畑院長: 感染時に重い症状があって、ICUに入ったり人工呼吸器につながれていた方は(リハビリのため)運動する必要があるのですが、そうではない軽症だった方々が後遺症になった場合は、「運動をすると悪くなる人」が非常に多いのです。特に一番やってはいけないのが、だるくなることを繰り返すということです。例えば10分、20分ほどの短い時間を歩いたり買い物に行っただけで、ものすごく疲れてだるくなってしまう方が、訓練だと思って頑張ってそれを毎日続けてしまうと、どんどんできなくなっていき、最終的に寝たきりに近づいてしまうことがよくあります。なので、「だるくなるレベルまで動いてはいけません」ということを患者さんには申し上げています。 また、だるくない方でも強い運動をすることで急に悪くなることがあり、例えばマラソンや、1時間以上頑張ってウオーキングしてしまったり、ゴルフの長いラウンドに行ってしまうなどすると、症状がきつくなってしまうことがありますので、避けていただくようにしています。これが一番大事です。