岸田首相の求心力低下浮き彫りに 誤算続いた通常国会、自民党内から相次ぎ批判
岸田文雄首相は21日、秋の自民党総裁選再選への基本戦略だった衆院解散・総選挙に踏み切れないまま、今国会の事実上の閉幕を迎えた。首相にとって今国会は誤算続きで、会期末間際には自民党内で公然と首相批判が噴出し、求心力の低下が露呈した。 【アンケート結果】岸田首相にいつまで続けてほしいか ■代議士会「首相が来るべきだ」 「自民党にとって大変厳しい、困難な国会だった」。21日昼、首相は、党所属衆院議員が集まる代議士会でこうあいさつした。その上で、一部の反対を押し切り、改正政治資金規正法の法案修正に踏み切ったことに理解を求めた。 「大きな混乱、ご迷惑をおかけしたが、大きな問題を起こしたのはわれわれ自民党。国民の厳しい声を考え、自民党を守るため党総裁として決断した」 同日午前の参院議員総会でも同様にあいさつした。首相が衆参の総会をはしごするのは珍しい。 首相の出席は急遽決まった。背景には、前日の代議士会で首相批判の声が上がったことがある。 「首相がこの場に来て心からの思いを発するべきだ」。津島淳衆院議員は20日の代議士会で、首相が法案修正について自民議員に説明していないと批判した。会場内は騒然とし「政権末期」「首相への突き上げだ」との声が漏れた。 津島氏は記者団に、発言は「独断」で行ったと明言したが、津島氏が所属する茂木派の会長、茂木敏充幹事長の差し金だと疑う声も上がった。首相周辺は20日、「茂木氏がはめたのかな、せこいな、と思った」と漏らした。 こうした見方が浮上するのは党のガバナンス(統治)が崩れているからに他ならない。 ■内閣支持率も過去最低水準に 首相は当初、派閥パーティー収入不記載事件の関係議員処分と規正法改正を行い、事件に「けじめ」を付けた上で、6月の定額減税で政権浮揚を図りたかった。その先に衆院解散が念頭にあった。 しかし、最も重い場合で離党勧告を科した処分内容への「厳しすぎる」との不満や、首相自身への処分がないことに批判が噴出した。改正規正法の法案修正も党内に禍根を残した。 世論にも好感されず、むしろ自民の混乱が露呈したことで内閣支持率が政権発足後最低水準に落ち込んだ。地方議員から首相退陣論が相次ぎ、地方の不満は国会議員にも連鎖した。
「(首相として)最後のあいさつだと思って聞いたよ」。21日の代議士会後、閣僚経験者はこう言い放った。政権幹部の一人は「何を言ってもいいだろうという雰囲気になっている」と頭を抱えた。(田中一世)