「キャリアの山をもう1回作りたい」「来年にだって辞めるぐらいの覚悟はある」サッカーノートを記し続ける稲垣祥の決意【インタビュー3】
連続出場記録が途絶えても
2024年、J1通算300試合出場を達成した稲垣祥だが、昨年末からある変化も訪れていた。 【画像】セルジオ越後、小野伸二、大久保嘉人、中村憲剛ら28名が厳選した「J歴代ベスト11」を一挙公開! “鉄人”。稲垣がそう呼ばれる所以は、些細な怪我では決して欠場をせず、シーズンを通じて、安定したパフォーマンスを提供し続ける、高く険しいハードルを自らに課し続けてきたところにある。 それこそ稲垣は2020年に名古屋に加入してから一度たりともリーグ戦を休まず、昨年6月にはレジェンド・楢﨑正剛(現アシスタントGKコーチ)を抜き、124試合連続出場のクラブ新記録を樹立した。 しかし、昨年11月末の神戸戦でシーズン4枚目の警告を受け、最終節は出場停止。連続出場記録は139でストップ。しかも、前半戦を優勝の狙える位置でターンしながら名古屋は失速し、その神戸戦では目の前でリーグ制覇を決められる屈辱を味わった。 「記録に関しては、いつか途絶えるものだし、そこにしがみついてプレーする気もさらさらなく、自分の責任を全うしたうえでの出場停止だったので、仕方ないという思いが大半でしたね。ただ、心の片隅ではやっぱりグランパスの稲垣祥として、より名を刻めるチャンスでもあったので、そこは惜しい気持ちもありました。それに試合に出続けるっていうのは自分が大切にしている部分なので。 神戸に目の前で優勝を決められた姿は今でも脳裏に焼き付いてるし、リーグ優勝したらああういう感情表現になるんだなとか、ポジティブに捉えれば、また奮い立つ材料にもなった。あの時の気持ちは、大切に自分の中にしまっています」 そして稲垣らしくベクトルを自らに向ける。 「やっぱり力不足を一番に感じました。個人として、優勝チームに値するボランチにはまだ力が足りていなかった。それはどの局面においてもで、守備のところでも、攻撃のところでも、周りを動かすっていう意味でも。自分がもっと存在感を発揮しないとチームが回っていかない、ボランチが活躍しないとチームは上がっていかないと身に沁みました。そしてチームとしてもまだまだ積み上げが必要だなと。 だけど、その悔しさがあった分、2024年はよりチャレンジャー精神で入れて、プレーできているのはひとつ新鮮ですね」 稲垣は今季、2年担ってきたキャプテンマークをランゲラックに引き継いでいる。 「自分の良さをさらにどう出していくか。そこに改めて目を向けながら、やれている部分はあります。もちろんチームがどうすれば上手く回るか、チームが勝つためにどう働くかって考えるのは、何も変わらないですが、それと同時に個人のパフォーマンスにも目を向けながら挑めているのは、また違った充実感があります。 やっぱり2022年、2023年はチームのことが9割ぐらいで、自分のプレーどうこうっていうよりは、チームが勝つために、チームが上手く回るためにという部分を常に考えていました。それが今年は多少割り合いが変わり、改めて自分の成長にも目を向けながらやっている感覚です。 長谷川(健太監督)さんからも『キャプテンではなくなるが、変わらずチームを引っ張っていくような存在でいてほしい』と話してもらいましたし、自分自身を見つめ直して高めていかないとチームも上がっていけないはずなので」 今季の名古屋はプレシーズンから3-1-4-2の新システムに挑んだが、まさかの開幕3連敗。「J1はそんなに甘くないぞと突き付けられた」と稲垣も振り返った名古屋は、従来の3-4-2-1に戻し、V字回復を果たし、先日にはルヴァンカップ準決勝進出も決めた。稲垣自身は、序盤戦、控えのまま試合を終える姿も見られるようになったが、7月のゴラッソが月間ベストゴールに選ばれるなど、前向きに取り組んできた。 「そりゃ試合に出られないシチュエーションを、全て気持ち良く受け入れられるはずもないですし、プロとして納得できない想いは当然ながらあります。でも、そこでも自分をもう一回見つめ直し、高めていく作業を、求めていたもので、ポジション争いを歓迎している自分もいます。自らがもうひとつ高いレベルにいくには、刺激が必要ですし、だからこそ成長させてもらえている今の環境には感謝したいですね。 やっぱり“安泰”って自分自身、そしてチームとしても良くないですし、シャッフルが起こらなければ、むしろ退化していってしまいますから」