兄さん、相続はどうするの?父が遺した〈遺産1億円〉を兄妹で相続も大部分が不動産…52歳・専業主婦の妹、どうしても〈代償金3000万円〉を欲しかった事情【相続の専門家が解説】
「実家は兄が同居しているので権利を主張するつもりはないが、自分の生活を考えると現金は欲しい」と主張する妹、財産の8割が現金ではなく家だった場合、武雄さんはどのように相続案を出せばいいのでしょうか。本記事では、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が事例をまじえて、できる対策について詳しく解説します。 年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
父親が亡くなった
武雄さん(55歳・男性)が妹の恵さん(52歳)と相談に来られました。 先月、88歳の父親が亡くなり、これから相続の手続きをしないといけないため、相談したいということです。 相続人は母親(82歳)と子ども二人の3人です。父親には遺言書がありませんので、3人で遺産分割協議をすることになります。
自宅が財産の8割
父親の財産は評価が約8,000万円の自宅で母親と武雄さんは同居しています。預貯金が2,000万円あり、父親の財産は約1億円となりました。 基礎控除4,800万円を超えていますので、相続税の申告が必要になりますが、自宅の小規模宅地等の特例を適用すれば土地の8割、約6,000万円の評価減ができるため、納税は必要ありません。小規模宅地等の特例を適用できるのは、母親か武雄さんとなります。
二次相続を考えると
母親の固有財産は預貯金1,000万円程度と生命保険1,000万円ということなのですが、自宅を相続すると二次相続でも課税対象となり、相続税の申告が必要となります。 また、母親は父親が亡くなったあと一挙に老化がすすみ、認知症の一歩手前のようで、預貯金の管理なども煩わしくなっているようで、今回の相続も自分はいらないと武雄さんと妹に言っているそうです。
妹の事情
相続の話が持ち上がって以来、妹の恵さんは武雄さんにたびたび「相続はどうするの?」と連絡をしてくるようになりました。武雄さんは「確かに相続が気になるのはわかるけれど、妹は悠々自適な専業主婦で特にお金には困っていないはず……なぜ執拗にお金のことを言ってくるのだろう?」と不思議に思っていたそうです。 元々仲がよかった兄妹だったこともあり、武雄さんが詳しく話を聞いてみると、実は半年前に妹の夫の浮気が原因で離婚していたということでした。慰謝料や財産分与はあるものの、ずっと専業主婦だった妹は一人で生きていくことに不安を感じていると明かしたということです。