「どちらが勝っても米国には損失」嫌われ者対決を制したのはトランプ氏
「三期目」があったらオバマ氏が圧勝?
クリントンは長きに渡って行ってきた選挙キャンペーンをペンシルバニア州フィラデルフィアで終え、市内で行われた最後の集会ではロック歌手のジョン・ボン・ジョヴィやブルース・スプリングスティーンも登場し、ライブ演奏でクリントンの選挙活動のフィナーレに花を添えた。この集会に参加したニュージャージー州出身のクラリッサ・シェパードさんが集会の様子を振り返る。 「集会の雰囲気は比較的良かったと思います。選挙での勝利を確信しているような、楽観的なムードでした。トランプ支持者との間で言い合いがありましたが、それ以外は本当にポジティブな雰囲気でした。クリントンとトランプのどちらかで大統領を選ばなくてはいけない状態ではクリントンに投票しますが、元閣僚としても元議員としても、彼女が有権者の信頼を勝ち得ているかといえば、必ずしもそうとは言えません。仮にオバマ大統領に3期目が許されていたのならば、今回の選挙はオバマ大統領の圧勝で終わっていたと思います」 「たられば」の話になってしまうが、シェパードさんのように、オバマ大統領に3期目があればと悔しがるアメリカ人有権者少なくなかった。米海軍で一等兵曹として二度の戦争に赴き、除隊後に関西で暮らすアフリカ系アメリカ人のC.スタンフォード・ブラウンさんもオバマ大統領の3期目が憲法で認められていないことを悔しがる一人だ。 「セオドア・ルーズベルト大統領のように、仮にオバマ大統領にもう一期与えられていたとすれば、トランプとクリントンがここまで接戦を演じることもなかったと思います。クリントンとトランプによる一連の選挙戦の流れと新大統領の誕生はアメリカの歴史の中で最悪な日の一つとして記憶されるでしょう」 オバマ大統領がホワイトハウスを去ることを悲しむアメリカ人は少なくなかったが、トランプ政権発足後、オバマ大統領の偉大さを痛感するアメリカ人が増えるのも必至だ。トランプは勝利宣言の中でアメリカの結束を声高に求めたが、むしろ国内がより深刻に分裂する危険にさらされている。
---------------------------------- ■仲野博文(なかの・ひろふみ) ジャーナリスト。1975年生まれ。アメリカの大学院でジャーナリズムを学んでいた2001年に同時多発テロを経験し、卒業後そのまま現地で報道の仕事に就く。10年近い海外滞在経験を活かして、欧米を中心とする海外ニュースの取材や解説を行う。ウェブサイト