「どちらが勝っても米国には損失」嫌われ者対決を制したのはトランプ氏
非白人でも目立ったクリントン氏への不信感
メキシコ人のディアナ・ガルシアさんはアメリカで高等教育を受け、現在はメキシコ国内の企業で働いているが、トランプ政権誕生後にメキシコ移民が一斉に強制送還されるリスクを懸念する。 「トランプがメキシコ移民に対する攻撃的な姿勢を打ち出し、それが彼を支持する有権者から支持された側面がある以上、トランプ政権誕生後にメキシコ人を含む多くの移民が実際に強制送還される可能性があります。しかし、アメリカ国内における低賃金の仕事を支えているのはメキシコ人を含む移民です。メキシコ人移民を強制送還した場合、アメリカ国内のサービス業や建設業などでは一気に人材不足が問題化するでしょうし、強制送還されたメキシコ人の雇用をメキシコ国内で作り出すのも困難な状態です。アメリカからの仕送りによって生活している家庭もメキシコには多く存在し、間違いなく両国間で大きな問題となるでしょう」 ガルシアさんは選挙前にメキシコ系アメリカ人の友人達と話をした際、メキシコ系アメリカ人コミュニティの中でクリントンを支持しないという声が意外に多いことを聞かされ、驚いたのだという。トランプのヒスパニック系に対する差別意識にほぼ全てのメキシコ系アメリカ人が憤っているものの、中絶を容認する姿勢を打ち出しているクリントンに対して、カトリック教徒が多いメキシコ系アメリカ人の中には嫌悪感を示すものも少なくなかったのだという。「自分たちが標的にされているのに、宗教的な理由で対抗馬のクリントンを支持しないことに驚きました」とガルシアさんは驚きを隠せない。 ミシガン州デトロイトで情報誌「メトロ・タイムズ」の編集主幹を務めるマイケル・ジャックマンさんは、「どちらの候補が勝利しても、アメリカにとっては大きな損失だ」と前置きしたうえで、トランプ人気がここまで躍進した理由について自身の思いを語る。 「一見すると、正反対のような2人だが、トランプとバーニー・サンダースには共通点がある。アメリカ国内の格差拡大がより深刻になり、雇用の確保が大きな問題となるなか、トランプもサンダースもアメリカ人に経済的な安定を与えるという主張を繰り返し、多くの支持者から賛同を得たのだ」 もちろん、クリントンもアメリカ国内の雇用増大や、ミドルクラス・貧困層のための政策を注視していたが、金融業界との繋がりがクローズアップされたこともあり、最後まで「富裕層にやさしい政治家」というイメージを拭うことはできなかった。