誰も住んでいないドイツ有数の超高層ビル、その目的は?
(CNN) ドイツの「シュバルツバルト(黒い森)」の東端、中世の町ロットバイルのすぐ外側に奇妙な建築物がそびえ立っている。この超高層ビルには誰も住んでいない。 【画像】米ジョージア州アトランタにある「TKエレベーターテストタワー」 「TKエレベーターテストタワー」と呼ばれるこの建物は高さ約246メートル。ドイツ有数の高層ビルだ。 しかし、明らかに窓がないことからわかるように、この高層ビルは空っぽのオフィスや高級マンションで満たされているわけではない。このタワーの主な目的は、その中心部に隠されている。中心部には最新のエレベーターモデルのテストに使用される12本のシャフトがあるのだ。 米ニューヨーク市のワン・ワールドトレードセンターなどの超高層ビルにエレベーターを供給してきたドイツのメーカー「TKエレベーター」は、米ジョージア州アトランタと中国広東省中山市にもテストタワーを持っている。後者は高さ約248メートルで、自由の女神像のほぼ3倍の高さを誇る。 エレベーターのテストタワーは、さらに高くなる可能性がある。たとえば、日立グループが中国広東省広州市に建設した「H1タワー」は高さ約289メートル。このタワーは同市で有数の高層ビルであり、ニューヨークなら25番目、ロサンゼルスなら3番目の高さに達する。 フィンランドのエレベーターメーカー「コネ」の最高技術責任者(CTO)トミオ・ピカラ氏は、エレベーターのテストタワーについて「F1チームのテストトラックのようなもの」と評し、「テストタワーが存在する主な、そして最も重要な理由は特定の安全機能の検証が実際の環境でしか実行できない点だ」と説明した。
稼働条件の再現
コネは台湾の台北101(2004年から10年まで世界一の高層ビルだった)や英ロンドンのザ・シャードにエレベーターを設置してきた。1967年にフィンランドのヒュビンカーに初のテストタワーを構築した後、さらに4棟を建設。最も高いタワーは2015年に中国江蘇省昆山に建てたもので、その高さは約236メートルに及ぶ。 ピカラ氏は「テストタワーでは、通常の利用者を除いたエレベーターの実際の稼働条件を補強している」と話す。 安全試験には自由落下をシミュレートするものもある。「実際のエレベーターではなく、同等の質量でテストする。テスト時には緊急ブレーキシステムと安全装置が作動してエレベーターを安全に停止させ、中にいる人がけがをしないようにする必要がある」という。 ピカラ氏によると、一部のテストタワーが非常に高い理由は、現代のエレベーターのほとんどが高速であるため、すぐにスペースが不足するためだ。より高速なエレベーターには、より高いテストタワーが必要で、毎秒約9メートル以上で移動する高速エレベーターをテストするには、最高速度まで加速し、その後減速するのに十分なスペースが求められるという。 一方で、上方に建設することだけが選択肢ではない。実際、世界最長のエレベーターテスト施設は地下にある。フィンランドのテュテュリにあるこの施設は、稼働中の石灰岩鉱山の一部であり、深さは350メートル近くに達する。 ピカラ氏は「私たちは鉱山の開口シャフトを使用することに同意した。これにより、高さ最高1000メートルの建物向けのエレベーターをテストできる」と話す。 この施設では毎秒最高約19メートルの速度でエレベーターをテストできる。また、自由落下テストでは重さ約10トンのエレベーターが毎秒約26メートルに達することが確認されている。この鉱山には合計11本のシャフトがあり、その長さは1.6キロ近くに及ぶ。 あらゆる超高層ビルと同様、エレベータータワーは揺れを引き起こし、テスト条件に影響を与える可能性のある強風に耐える必要がある。このため、一部のタワーには大規模な制振装置が取り付けられている。 一方で、極限状態でエレベーター技術をテストしたい技術者はこれらの大規模な制振装置をまったく逆の目的、つまり振動を吸収するのではなく発生させる目的でも使用できる。ロットバイルのTKエレベーターテストタワーには、4本のスチールケーブルでつり下げられた200トンの調整済み制振装置がある。発生させる振動によって、エレベーター開発における特に大きな課題の一つである風と地震をシミュレートできる。