埋めきれなかった光と影。「日本最後のイチロー」はスタメン決定の開幕戦で奇跡を起こせるのか?
サービス監督は開幕スタメンを明言
それでもサービス監督は、イチローの開幕戦でのスタメン起用を公式に明言した。 「イチローは開幕戦では先発でスタートする。守備は大丈夫。強肩を見せた。彼の開幕に私は胸を躍らせている。バッティングはキャンプでふるわなかったが、数日経てば回復するのがイチローなんだ。楽しみにしている」 レジェンドへの信頼とリスペクトだろう。この2試合後にロースターから外れれば、それはイコール引退を意味する。サービス監督は、それらを踏まえた上でイチローにチャンスを与える。だが、20日の第1戦が、またノーヒットであれば、21日の第2戦目はスタメンから外されるかもしれない。 イチローは、試合後、また東京ドームのファンへの感謝の言葉を口にした。 「凄い(球場の)空気がよくてね。ヒット1本打ちたかったが……残念でしたね。ジャイアンツファンを好きになりましたよ」 だが、ファンが本当に待ち望んでいるのは、公式戦でのヒットである。“凱旋試合”というスペシャルな舞台設定で迎える開幕戦を前に修正の機会は“時間切れ”となったが、イチローは「始まってしまう感じは別にないですね」という。 そして「気持ち?それは勝手に高まる」と続けた。 「日本最後のイチロー」に“奇跡”は生まれるのか。 それが“ある”とすれば、この2日間のプレシーズンマッチでイチローを感激させたファンが作る“熱”だろう。説明のつかない力だ。 4回の第2打席。カウント2-2からファウルを打った直後に、突然、イチローの心を奮い立たせるかのような温かい拍手が湧きおこり、さざ波のようにドーム全体を包んだのである。 ――球場の空気がプラスアルファを生む可能性は? シアトルのビートライターの代表取材に対して、イチローは、「そりゃ、そうなる、みんながそうなるでしょう」と答えた後に「でも、みんな明日観光いくからね。そこはちょっとわかんないね」と、お得意のジョークを挟んだという。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)