埋めきれなかった光と影。「日本最後のイチロー」はスタメン決定の開幕戦で奇跡を起こせるのか?
シアトル・マリナーズのイチロー(45)が18日、東京ドームで行われた巨人とのプレシーズンマッチに2試合続けて「9番・ライト」で先発出場。巨人の原監督があっぱれの拍手を送ったレーザービームで、その守備力をアピールしたが、一方で、バットの方はついに24打席ノーヒットのまま本番を迎えることになった。約1年あるブランクの影響か、それとも限界なのか。それでもサービス監督は、試合後、20日に行われるアスレチックスとの開幕戦でのイチローのスタメン起用を明言した。ここで結果を出さなくては、“東京後”のロースター存続にもつながらない。「日本最後のイチロー」は本番で“奇跡”を起こせるのか。
イチロー解説では完璧ではないレーザービーム
“光と影”のアンバランスを最後まで埋めきれなかった。 東京ドームを埋めた3万7000人超のファンの歓声ボリュームが最大級になったのは、3回の守備のシーン。無死二塁から田中俊太の高々と上がった打球がライトへ。推定落下地点は、イチローの定位置から1、2歩後ろの位置だろうか。イチローは、素早く下がって助走路を確保すると、キャッチ後、流れるような美しいフォームで三塁へ“レーザービーム”。三塁ベース上で待ち受けたヒーリーの胸の位置にノーバウンドでのストライク送球である。スタートを切ることしかできなかったゲレーロが、もう驚きを超えてリスペクトの拍手。一塁ベンチでは、原監督までがスタンディングオベーションを送っていた。 「スローイングにしても私の知っている限りのイチローの姿だった」 原監督らしい表現での賛辞。 試合後、そのことを知らされるとイチローも「ああ、そうですか。ゲレーロ(の拍手)は見えたけど原さんはわからなかった。そうですか。それは嬉しいですね」と笑った。 だが、イチロー自らの解説によると、完璧なレーザービームではなかったらしい。 「フォーシームで握れていない。グリップがちゃんとできていればもっと指にかかるんだけど。それは望み過ぎかもしれませんが」 確かにスローイングはやや放物線を描いていた。 それでも凱旋試合で肩を披露するチャンスに恵まれた運に感謝した。 「でも機会がないとできない。よく打ってくれましたね。これは運だから。2日間で、あんなチャンスがあるかどうかわからない。そこに来てくれたんだから、(レーザービームの披露は)当然ですよ」 実は、2001年4月11日のアスレチックス戦での補殺を「レーザービーム」と形容して絶叫した球団付の実況アナウンサーである65歳のリック・リズ氏が、今回も来日している。あれから18年の時を経て、今なお、現役のイチローが、今なお現役のレーザービームを東京の地で披露することになるとは、名付け親も想像できなかっただろう。