3軍制導入には消極的な阪神、無名の高校生より独立リーグから大化け狙い
【球界ここだけの話】今年2月からファーム施設が尼崎に移転する阪神。球場や寮が一新されることを機に、「3軍」制などファーム態勢の大きな改革・拡充も予想されたが、当面はウエスタン・リーグに参戦している2軍のチーム以外に育成のサテライトチームが誕生することはなさそうだ。 【写真】阪神・前川右京ら虎風荘寮生が新ファーム施設見学「すごく練習できる環境」 昨年末、嶌村聡球団本部長は今年からドラフト、外国人などの補強に関わる編成部門の実務を球団本部副本部長の竹内孝行氏に委ねることとなり、このように説明した。 「チーム編成における大きなグランドデザイン(全体構想)、設計図は共有できている。たとえば、育成ドラフトでの指名で高校生を獲っていない方針を貫くのを踏まえるとか、大きなグランドデザインは何の変わりもなくやっていって、タイガースの次の時代につないでいく」 確かに昨秋の育成ドラフトでは、1位の工藤泰成投手(23)=四国IL・徳島=を筆頭に独立リーグの選手が3人とウエスタン・リーグに参加しているくふうハヤテから早川太貴投手(25)を指名し、高校生は一人もいなかった。 2005年に制度が始まって以来、18年で23人。そのうち高校生の指名は4人。10年秋のドラフトで阪口哲也内野手(市和歌山)、島本浩也投手(福知山成美)、穴田真規内野手(箕面東)の3人が指名されたのを最後に、以降は途絶えている。1軍公式戦出場を果たしたのは、現在も活躍中の島本ただ一人だ。実績のない素材型の高校生を戦力になるまで育てるのは、それだけ至難の業ということだろう。 ソフトバンクのように高校卒業後に育成枠で入団した選手から1軍でプレーする選手が断続的に現れるのは、4軍制を敷いて独立リーグや海外のチームと対外試合を数多く組み、実戦経験を通じて成長を促すなどの下地づくりがあったればこそだ。 阪神の球団関係者は「下部チームをつくるのは現実的ではない。育成枠の選手の数はソフトバンクぐらい(50人以上)確保してようやくチームが立ちいく感じで、巨人は3軍制を敷いていても苦労している。対外試合の移動や宿泊の費用負担も小さくはない」と指摘する。 阪神は素材型の高校生を大勢競わせて磨き上げる発掘型のファーム運営ではなく、ある程度キャリアを積んだ独立リーグの選手に目を向ける方針。とはいえ、大学卒、独立リーグ出身でも育成枠からの入団で1億円プレーヤーまで大化けした例はまだ出ていない。新たに入団した4選手のほか、昨年1軍で26試合に出場した野口恭佑外野手、今年育成2年目を迎える松原快投手らの台頭に期待が懸かる。(上阪正人)