城氏がW杯アジア2次予選初戦の快勝を分析「なぜ大迫は下がった位置でプレーをしたのか?」
2022年カタールW杯アジア2次予選の初戦で森保ジャパンがまったく危なげなく世界ランキング135位の格下ミャンマーから勝ち点「3」を奪った。敵地。豪雨。最悪のピッチコンディション、しかも湿度が95%という過酷な条件下で、たとえ力の差があっても何が起きるかわからないアジア予選で好スタートを切ったことは評価できる。 パスが、なかなか通らない環境下だったが、ロングボールを使って押し上げていき、16分には、中島が得意とする45度の角度からの個人技(ミドルシュート)で先制ゴールを揺らし、続く26分には、堂安からの右の正確なクロスに南野がヘッドを合わせて2点目を刻んだ。先制、追加点共に理想的な時間帯。前半のゲーム展開は、敵地でのW杯アジア2次予選の初戦としては、非の打ち所がないものだった。 欲を言えば、後半に3点目、4点目を取っていれば、もっと楽に試合を運べたし、実力差からすれば取らねばならなかっただろう。後半には日本の動きも落ちミスも目立った。確かに、そこは課題として残ったが、アジア特有の高い湿度と、最悪のピッチコンディションの中では、体力はどんどん失われ、なにしろふくらはぎへの負担がかかる。ミャンマーの選手も足を吊ってバタバタと倒れていたが、濡れて重くなった芝では、ボールが転がってこず、一瞬、ボールが浮くので、神経を使ってコントロールせねばならなくなる。大迫のシュートミスも、一瞬、ボールが浮いたのが原因だ。 通常のコンディションに比べて「倍疲れる」と言ってもいい。しかも、ミャンマーも前に出てこない。私は、それらを差し引くと、この試合は、後半の課題よりも、前半にしっかりとペースを握り敵地の最悪条件下で勝ち点「3」を奪った意義の方が大きいと評価した。
長丁場のアジア2次予選でやるべきこと
W杯アジア2次予選対策も見えた。 大迫と南野は、縦の関係のポジションをうまく入れ替えながら、ミャンマーの守備陣を揺さぶった。大迫の“楔”としての役割は、かなり研究され、ミャンマーは、そこを機能させまいと、マンツーマンでマークしにきた。大迫は、その対策として、相当下がってプレーする工夫をしていた。それでも大迫に人がつくから、ちょうど裏のスペースが空く。そのスペースに南野が抜け出して何度も仕掛けた。おそらく、実力差のあるW杯アジア2次予選では、ほとんどの国が、守備的に来て、大迫はマークされる。そこを見越しての対策である。 堂安がサイドで起点を作って2点目を奪ったが、これも、硬いブロックをこじ開けていく手法としては、効果のある攻撃。今後も予想される守備的な相手に対して、サイド攻撃、大迫―南野の縦の仕掛けなどをベースにしていくことを再確認するゲームでもあったのかもしれない。 W杯アジア2次予選は長丁場である。全勝することは間違いないので、森保監督は、この間、勝負の最終予選に向けての準備を進めている。そのひとつが、チームのオプションを増やす作業。先発させた大迫、中島、南野、堂安の前線4人の連携が、日本の武器になっていくが、この連携に、さらなるプラスアルファを森保監督は求めている。誰が、どう絡むと、どんな反応がおきるのか。そこを見極めるのも2次予選の中での重要なミッションで、この日は、鈴木武蔵、伊東純也の2人を後半に投入した。 そして最も“化学反応”への期待が高いのが、後半35分過ぎから使った久保だろう。W杯予選の史上最年少出場記録を更新した久保の見せ場は、ヒールパスくらいしかなく「久保で点を取りにいく」というベンチの目論見は外れた。しかし、改めて久保のポテンシャルには感心させられた。 ピッチが俯瞰で見えている。常に首を振る。ボールをもらう前に必ず逆サイドを見て、相手ディフェンスの位置、そして次への動きを予測しスペースを確認している。そういう瞬時の判断、攻撃デザインを動きながらできるのだから驚きで。ボールを受けた瞬間に次に何をするかが楽しみになる選手である。 今回は、中島との交替で入って右サイドハーフのポジションに入ったが、左サイドハーフの位置から自由に動く中島と、久保との組み合わせも長い時間、見てみたい。大迫―南野の縦関係に、久保がどう絡むかも、ぜひ試してもらいたい。久保との様々な組み合わせにチームの可能性は広がるし、このW杯アジア2次予選では、久保の最適な起用法を見極めていくこともテーマになるだろう。 (文責・城彰二/元日本代表FW)