「親密」な握手、ゴルフ、食事、会談……日米同盟の文化的な構図
日本文化の欧米化
しかし19世紀後半、極東の列島は、黒船特にペリーの放った艦載砲によって泰平の夢を砕かれた。 それまでの外力はすべて西から来たのであるが、この力は東からやって来た。つまり「ユーラシアの帯」の「大きな世界」の、西向きのダイナミズムが、地球を一周してきたのだ。しかもそれは「燃焼」というまったく新しい動力によっていた。 日本人は驚いた。そして走り出した(このサイトの「都市化の残像・東京駅」に書いたように)。 明治維新によって、日本文化の表層は一挙に西洋化し近代化される。奇跡ともいうべき文明の受容に成功し、そのエネルギーは、清国、ロシアとぶつかりながら、四方に向かったが、東からの力つまりアメリカの文明力にぶつかって砕け散った。 敗戦によって、日本文化の表層は一挙にアメリカナイズされる。 筆者の世代は、ジョン・ウェインのカウボーイ姿に、マリリン・モンローのグラマラスな容姿に、テレビドラマに登場する豊かな家庭に憧れた。ジャズ、ロック、ジーンズ、バーガー、コーラ、ベースボール。列島は、ユーラシアにおけるアメリカ文化の橋頭堡となった。 しかしそれは表層の文化であって、やはり深層には中国の影響を受けながらも次第に日本化した文化を残し(本来、「和様(わよう)=和風」とは、「唐様(からよう)=中国風」が日本に和(なご)んだものを意味する)、基層には、樹木に覆われた青山と滝のように流れる清川に恵まれた美しい自然風土に育まれた清冽な美意識を残す、ユニークな文化性を保っている。
天皇の「純粋持続性」と大統領の「包含ダイナミズム」
伊勢神宮が、20年ごとの式年遷宮によって、白木・茅葺・掘立柱という従来の様式を守りながら、朱塗り・瓦葺き・基壇の上という仏教建築の持続性に対抗する持続性を確保しようとしたように(これも以前このサイトに詳述している)、日本は中国からの文字文明を受け入れながらも、文化の原初性と純粋性を維持しようとした。その努力がその後の日本文化の性格を決定的なものにしている。万世一系の天皇制はその象徴的な要である。 日本文化の特質として、外来の「受容」と「純粋」の持続性というべきものがあるのだ。 ヨーロッパ文化を母体としながらも、厳しい荒野を開拓しつつ、多様な文化の包含と複合(融合にはほど遠い)に向かうアメリカ文化は、その矛盾と葛藤を解決する努力によってダイナミズミックに発展してきた。強い力をもつ大統領制はその象徴的な要である。 アメリカ文化の特質として、「包含」と「葛藤」のダイナミズムというべきものがあるのだ。