マイナ保険証、政府のPRする「メリット」が二転三転する理由…最近は「なりすまし・不正利用防止」を強調も“実はマイナス”の指摘
政府がPRする「マイナ保険証のメリット」の“変遷”が意味するもの
北畑氏は、「お金の話にこだわる割に、客観的な数値を見ず、緻密な議論をしようともしない態度は問題です」と述べた。 たしかに、政府のPRのあり方も含め、マイナ保険証の「メリット」とされる点については、客観的な数値に基づく議論よりも、むしろ「デジタル化」「医療DX(※)」という言葉がもつ“イメージ”に引きずられたイデオロギー的・観念的な議論が先行してきた面があることは否定できないだろう。 ※保健・医療・介護の各段階で発生する情報やデータを、クラウドなどを通して、業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えること(出典:厚生労働省) 現に、政府は当初「デジタル化」「医療DX」のメリットを強調していたが、最近はそれらよりも、むしろ「なりすましによる不正利用防止」のメリットを強調するようになってきている。態度が二転三転していると評価されてもやむを得ないだろう。 他方で、現状指摘されている「現行保険証の廃止、マイナ保険証への一本化」の問題点の多くは、現行の保険証を廃止せず、存続させることで解決する。 現行の健康保険証の新規発行停止・マイナ保険証への一本化の施行は12月2日に迫っている。こうしている間にも医療の現場でトラブルが発生していること、また「2025年問題」などトラブルが予測されることは、いずれも「現実」である。現実を直視しないイデオロギーや観念論・精神論を先行させた国家・プロジェクトがどのような結末を迎えるかは、歴史が証明している。国会・政府には、現実を直視した冷静な対応が求められよう。
弁護士JP編集部