「暖房ガンガンなのに寒い家」はここが決定的に弱い…「最大200万円の助成」を使ってすぐに改修すべき2つの場所
■高血圧、動脈硬化、呼吸器疾患などのリスクも 「ヒートショック」という言葉は、少しずつ知られてきているようです。特に冬の入浴時のリスクを認識している方は多いと思います。消費者庁が以前出したニュースリリースによると、年間1万9000人もの方が冬の入浴時に亡くなっています。これは、交通事故死者数の7倍以上に上る人数です。(関連記事〈「ヒートショック溺死」は愛媛、鹿児島、静岡に多い理由…「暖房をつけても足元が冷える部屋」を放置してはいけない〉参照) ですが、冬の家の寒さによる健康リスクは、ヒートショックだけではありません。上記の論文によると、寒さに起因して死亡に至る生物学的なプロセスは、主に心血管系と呼吸器系に悪影響を及ぼすことによるそうです。 寒さにさらされると、血圧や血管収縮、血液粘度、炎症反応などに影響し、心血管系にストレスがかかります。同様に、寒さは気管支収縮を誘発し、粘膜繊毛防御やその他の免疫反応を抑制し、局所的な炎症を引き起こし、呼吸器感染症のリスクを高めるということです。 そして、これらの生理学的反応は、暑さに起因するものよりも長く持続し、高血圧・動脈硬化・循環器疾患、呼吸器疾患等を招き、死亡リスクを高めます。これらによって、日本の死亡者数の約10%は、寒さに起因して死亡しているということのようです。つまり、1万9000人/年というヒートショックによる死亡者数は、そのごく一部にしか過ぎないということです。 ■断熱改修を行うと血圧が下がる 日本では2014~2018年度にかけて、国土交通省の支援により、断熱改修などによる生活空間の温熱環境の改善が、居住者の健康にどのような影響を与えるかについて、医学・建築環境工学の観点から検証するかなり大がかりな調査が行われています。公表されている調査結果の一部をご紹介します。 まず、断熱改修工事を行うと、改修前に比べて、起床時の最高血圧が平均3.5mmHg、最低血圧が1.5mmHg下がったそうです。さらに、居間が18℃、寝室が10℃の家に比べて、居間も寝室も18℃に保つと、起床時の最高血圧が2mmHg下がるそうです。 なお、厚生労働省は、40~80歳代の国民の最高血圧を平均4mmHg低下させると、脳卒中死亡者数が年間約1万人、冠動脈疾患死亡者数が約5000人減少すると推計しています。健康寿命の増進には、血圧を下げることが重要なようです。