「簿記も何もわからないけど」55歳でNHKを退職した武田真一 夫婦で個人事務所を立ち上げた今「常々疑問に思ってた」
── 会社員時代とフリーに転身されてからでは、時間の使い方もかわったのでは? 武田さん:さいわいなことに、自由になる時間が増えましたので、たくさん映画を観たり、趣味のギターを弾いたりしています。取材や講演活動でいろんな地域に行く機会も増えたので、なるべくその前後には、街をいろいろ探索するようにしていますね。 ── 映画はどんなジャンルを? 武田さん:情報番組をやっているので、できるだけジャンルを問わず観るようになりました。今までなら、積極的に観に行かないだろうなと思うようなものにも行くようになりました。もともと是枝裕和監督とか、黒沢清監督などが好きなのですが、バリバリのSF超大作とか、ハリウッド作品とかといったものも観るようになり、楽しんでいます。もちろんアニメも観ますよ。
■そんな自分が世の中を語るのは「ちょっと違う」と ── インプットを大事にされているのですね。 武田さん:フリーランスは、自分自身の全てが「資産」です。何を感じ、どんな言葉を発するのか。すべてが問われますから、常に自分自身を高めていかなくてはいけないなと。そのためには、いろんなものに触れ、刺激を受けることがとても大事だと思っています。 ── フリーに転身後、夫婦で個人事務所を立ち上げられました。てっきりどこかの芸能事務所に所属されるものかと思っていたので、少し意外でした。
武田さん:たしかに、大きな事務所に所属してマネジメントをお願いしたほうが、仕事を受ける際もスムーズですし、余計なことに気をとらわれず、現場の仕事に没頭できると思います。ですが、あえてそれはしたくなかったんです。 ずっと会社員として働いてきて、自分の仕事を自分ですべて管理するという経験もしないまま一生を終えるのはどうなんだろうと常々疑問に思っていました。税金の計算や経理の処理にしても、世の中で商売をしている方は皆さん普通にやっているのに、自分はいっさいやったことがないし、やり方もわからない。そんな自分が世の中のことを語るのは「ちょっと違うな」と。それは、退職前に担当した大阪のニュース番組で、地域の町工場や商店の皆さんを取材するなかで抱いた思いでした。ですから、大変な道のりになるのはわかっていたけれど、それも含めて、すべて経験してみようと考えたんですね。