「簿記も何もわからないけど」55歳でNHKを退職した武田真一 夫婦で個人事務所を立ち上げた今「常々疑問に思ってた」
── フリーになってもブレがないのはさすがですね。プレッシャーや不安を感じたりはされないのでしょうか? 武田さん:もちろんあります。これまでNHKという組織に雇用されていたので、たとえ番組がなくなってもクビになることもないし、黙っていても次の仕事が与えられてきました。でも、今はフリーですから、先の保障があるわけではありません。自分の言動や態度、立ち振る舞いの一つひとつが評価の対象になりますから、プレッシャーや不安がないといったら嘘になります。
どうすれば番組に貢献できるのか、常に考えています。会社員時代よりも、さらに責任感を持ってのぞんでいますね。
■気になるSNSのエゴサーチについては… ── 視聴率やSNSなどの反応は、どれくらい気にされますか? 武田さん:一喜一憂するわけではありませんが、やっぱり意識はしますね。毎日、番組終了後に視聴率のデータを見ながら、どんなコンテンツが人気なのか、現状を把握します。エゴサーチはしませんが、SNSも見ますよ。なかには厳しいご指摘もありますが、そこは真摯に受け止めます。
ただ、過度に視聴率に左右されすぎるのもよくないと思うんです。テレビには、視聴者が望むものを提供する一方で、皆さんがまったく知らないことをお伝えする役割もあるはず。ですから、そこに迎合してばかりでは、メディアとしての責任を果たせません。新しい発見をしていただくために「半歩先を行く」ことも大事です。そこは、制作側の感性が問われるところなので、僕自身も幅広いジャンルの情報に触れたり、インプットの機会を増やして自分をアップデートしていく必要があります。
大事なのは、過去の実績よりも「今、何をやっているか」だと思っているので、今は、『DayDay.』のMCとしての評価をいただけるように頑張っているところですね。 ── たとえば、どんなことを意識されているのでしょう? 武田さん:報道ニュースを読んでいたときと違い、今はMCとして番組のなかで自分の意見を述べなくてはいけません。世の中の出来事に対し、どう受け止めて、どんな態度を取るのか、これまで以上に真剣に考えるようになって、ニュースへの向き合い方がより深くなりました。「今日こんなことがありました」だけでなく、そこに至るまでの経緯、世間での意見などを把握したうえで、自分がこのニュースに対し、どういう態度でモノを言っていくか、これまで以上に突き詰めて考えなくてはいけないと思っています。適当なことは言いたくないので、そこはプライドとこだわりをもってやっていく。それにより、少しでも世の中がよくなったり、見てくださる皆さんの理解が進めばいいなという思いがあります。