センバツ高校野球 「一番楽しい場所」 チーム支える男 石橋・マネジャー 小池涼太さん /栃木
第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に出場する石橋では、5人のマネジャーが32人の選手をサポートしている。女子4人に加え、唯一の男子マネジャーが選手だった小池涼太さん(2年)だ。「ノックを頼まれたり、アドバイスを求められたり、選手たちに頼られるとうれしい」とやりがいを感じている。【鴨田玲奈】 ◇元選手、広い視野生かし尽力 同校のマネジャーの仕事は、練習や補食の準備、ボール磨き、グラウンド整備、来客への対応など多岐にわたる。小池さんはノックや打撃投手も買って出る。OBらによると、同校ではこれまで男子マネジャーはいなかったという。 2021年4月に選手として入部したが、8月に片頭痛とぜんそくが悪化し、福田博之監督に退部を申し出た。だが、横松誠也主将(2年)は「マネジャーをやらないか。野球経験者がやってくれるとチームとしても大きい」と引き留めた。横松主将は小池さんについて「周囲のことを考えて行動できる、気遣いができる人なので、マネジャーに向いていると思った」と話す。葛藤はあったものの、小池さんは「横松の優しい説得がうれしかった」と、体調が回復した約4カ月後、マネジャーとして部に帰ってきた。 「おーい!今のは捕らないと」「いいね!」。2月中旬、グラウンドには大きな声で仲間を鼓舞する小池さんの声が響いていた。人数が合わない時はキャッチボールの相手をし、ノックも打つ。打撃練習の様子を動画に収め、選手に見せながら助言することも多い。練習後のグラウンド整備も率先して行う。「塾に行っている選手が多く、みんな睡眠時間が少ないので、少しでも早く帰れるように」と心がけている。 小池さん自身も自宅は那須烏山市で、通学に片道1時間半以上かかる。「勉強やリラックスできる時間の確保が難しい」と言うが、練習後は選手の自主練習にも付き合う。「野球をやりたくて戻って来たので、できるだけ選手の要望を聞きたい」と苦にする様子はない。 マネジャーになって初めて見えたものもあった。ある練習試合で、相手チームが外野と内野で声がけをして守備の配置を変えていた。「味方の配球も冷静に見られ、他の選択肢もあったなと気付くことができる。視野が広くなって発見したことは、その都度選手と共有している」と話す。 1月27日のセンバツ出場校発表で、瀬端徹校長から伝えられた「石橋高校が選出されました」という言葉は今も鮮明に記憶に残っている。「夢だった甲子園に連れて行ってくれて、選手たちには感謝しかない」。小池さんは、「選手として出たかった思いもある」としつつ、「野球への関わり方として、チームを支える方が自分に合っている」と感じており、「部に戻ってよかった。ここが一番心から楽しいと思える場所」と柔らかな笑顔を見せる。