亡くなった父の「通帳」が見当たらない……!ネットバンキングに移行すると「遺産2000万円」は相続できなくなる?
近年「ネットバンキング」という言葉を、よく耳にするようになりました。それによって、通帳が見当たらず相続時に苦労するという方が筆者の顧客にも増えています。 そこで、ネットバンキングに移行した場合の、遺産の取り扱いについて解説していきます。
ネットバンキングで通帳がなくても相続はできる
ネットバンキングで通帳がなくとも、口座内のお金はきちんと全額相続できます。 「2000万円もお金があれば、通帳くらいあるのでは」と思う人もいるかもしれませんが、通帳のないことが原則のネットバンキングでは、たとえ2000万円の預金があっても、通帳は作られません。亡くなった人のネットバンキング口座から、お金を引き出す方法は、ネットバンキングの運営会社に連絡することです。 通常の銀行であっても、亡くなった人の名義の口座からお金を引き出す際は、いったんその銀行に、口座名義人が亡くなったことを連絡して、所定の手続きを経て引き出します。その点については、ネットバンキングにおいても変わりはありません。 つまり基本的に、亡くなった方の口座からお金を引き出す手続きについては、通帳のないネットバンキングであっても、通常の銀行であっても、変わりありません。 ただし、ネットバンキングは現実に店舗がないため、電話またはインターネット経由での連絡が必要となる点には、注意が必要です。
相続手続きをせずにお金をおろすとどうなる?
先述のように、インターネットバンキングにおいては、通帳がなくともお金をおろせます。普段使う際もキャッシュカードがあれば引き落とすことができますし、ログイン用のIDとパスワード等が分かれば、自宅のパソコンやスマートフォンから、口座内のお金を他人の口座へ移すことができます。 そのため「相続時も、銀行に対して相続手続きをせずに、平時と同じようにお金を引き出してもよいのでは?」と思う方もあるかもしれません。しかし、それは絶対にしてはいけません。他人のIDなどを使ってログインすることは、銀行の利用規約内で禁止されているはずです。 また、相続について「単純承認(亡くなった方のプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐこと)」と見なされてしまったり、相続人間でトラブルに発展したりする可能性もあります。 いずれにせよ、ネットバンキングだからと手続きをとらずにお金をおろすと、あらぬトラブルの原因となる可能性があります。 必ず相続手続きを正しく行い、お金を引き出すべきです。特に2000万円という大きな額での預金とあれば、通常より相続トラブルが起きやすいことも想定されるため、なおさらです。