基準値第一主義の医者か、患者にとっていい医者か。このシンプルな質問で見極められる。
今回、著者の和田秀樹さんが、二度と診てもらわないと決めた医者とのエピソードを明かします。なぜ、そう決めたかと言うと、その医者が個人差より基準値でものをみる基準値第一主義だったからだそう…。 【前編】基準値にこだわるマジメな医者は「良い」医者か? 残りの人生を楽しんで生きる高齢者が一人でも多くなってほしい、という目的で書かれたのが『医者にヨボヨボにされない47の心得 医療に賢くかかり、死ぬまで元気に生きる方法』です。 本書から、基準値第一主義の医者かどうかが見極められる質問や、医者とともに自分に合った治療を見つけるコミュニケーション方法を解説。とともに、かつて人間ドック学会が発表した、150万人規模の人間ドック受診者のデータ解析をもととした基準範囲を紹介します。
基準値は、自分の「ちょうどいい値」とは違う
基準値第一主義の医者というのは、わりとどこにでもいます。 私は心不全を抱えていて、3ヵ月にいっぺん医者に診てもらっています。通院できる曜日を変更しなければならず、医者を変えました。ところが、この新しい医者のところに行くなり、こう言われました。 「この血糖値とコレステロール値はどうしたんですか?」 「もっと薬を飲みましょう」 挙げ句の果てに「あなたは医者なんだろう?」とも責められました。私が納得している検査結果であるにもかかわらず、まるで、検査データの数値が悪いのはおまえの努力不足のせい、もっと努力しろと責められているようでした。 もう二度とこの医者のところには行かないと決めましたが、患者さんのなかには医者の言葉に傷つきながら、言うとおりに薬を増やしてしまう人も少なくないと想像します。
薬について質問すると医者の考え方がわかる
基準値第一主義の医者かどうかというのは、薬について質問してみるとよくわかります。 「血圧の薬を飲むようになってから、血圧は基準値に下がってきました。でも、今度は朝ベッドから起き上がるのがちょっとしんどくて。どうしてでしょうか?」 その質問に対して、「そうですか。血圧はいい調子に下がっているので問題ないと思います。日中もだるいのは夜眠れていない可能性があるので、軽い睡眠薬を飲んでみますか?」 こんな基準値しか見ておらず、しかも薬をホイホイ簡単に出す医者なら、別の医者に乗り換えたほうがいいかもしれません。私なら、こういう医者からはすぐに逃げます。 でも、次のような答えが返ってきたら、この医者にかかってみようと考え直すでしょう。 「日中もだるいんですね。あなたにとってはこの血圧の値だと低すぎるのかもしれませんね。もう少しお薬の量を減らしてみましょう。ほかには何か困ったことはありませんか?」 患者さんの個人差というものをふまえながら、患者さんの具合をよく聞いて対応してくれる医者を探すことです。 そして、薬を飲んだり、治療を受けて何か不調を感じたり、困ったりしたことがあったら、あきらめずに医者に伝えるようにしましょう。何でも言うことを聞く「従順な患者」は、医者にヨボヨボにされやすい患者です。 何度も質問をして医者とコミュニケーションをとりながら、この医者はこちらの要望を聞いてくれそうだな、この医者は信頼できないな、という見極める力がついてくるでしょう。そうしたやりとりのなかで「このくらいの薬の量なら、朝起きられる」というちょうどいい値を、医者と患者の共同作業によって見つけていければ理想的です。