記録的大雨で浸水の山形・戸沢村、集団移転が国プロジェクトに…村長「大きな一歩」
7月の記録的大雨で集落ほぼ全体が浸水被害を受けた山形県戸沢村蔵岡地区(69世帯)で検討されている集団移転事業が、国土交通省の「緊急治水対策プロジェクト」の中に明記されることが29日、決まった。同村が目指す、「防災集団移転促進事業」(防集)の枠組みによる移転に向け、一歩前進した形だ。
新庄市内で同日開かれた、国交省と県、各市町村で作る「最上川流域治水協議会」の会議で、防集が盛り込まれた治水対策案が提出され、反対がなかった。
防集の枠組みでは、移転に際し国から費用補助を受けられる。ただ、そのためには同プロジェクトに盛り込まれている必要があった。
出席した加藤文明・戸沢村長は「移転に向けた大きな一歩だ」と喜んだ。さらに、今後は対象となる住民全員の同意を得ることを目指すといい、「住民へ説明し、意向調査を行いたい」と述べた。
同プロジェクトの対象期間は2024~29年度。防集のほかには、酒田市の排水機場が浸水で動かなくなったことを受け、防水壁を新設する案や、人工知能(AI)で雨水の流入量を予測し、ダムを制御するシステムを導入する方針などが示された。
国交省新庄河川事務所の畑井言介副所長は「今回の災害では線状降水帯が川の流域の上空に発生し、大雨が降った。この流域の市町村と県、国が一体となって、短期間に集中して治水対策に取り組む」と話した。
同協議会は20年の豪雨災害をきっかけに発足した組織。堤防整備や川底の掘削のほか、上流部でのため池の造成、避難計画の策定、高台への移転などを総合的に行う「流域治水」の考えに基づき、治水対策を行ってきた。これまでは置賜・村山地域の対策が中心だったが、今回の会議は、最上・庄内地域が対象となった。