金利上昇でも日本の不動産は「買い」、ブラックストーン不動産部門・橘田代表に聞く
懸念材料があるとすれば、私募ファンドや私募REITの乱立だ。あちこちで組成された結果、投資家の資金が枯渇しつつある。資金が集められなければ、彼らへの売却を念頭に物件を保有していたファンドやリース会社が処分に困る。物件の目詰まりが起きれば、流動性に悪影響が及ぶかもしれない。 ■ホテルは価格帯で明暗 ――2021年に、近鉄グループホールディングスから「都ホテル 京都八条」を含むホテル8棟計2294室を取得しました。その後の進捗は。
京都八条は2023年8月に全面改装を終えた。宿泊単価は好調で、宴会やレストランの需要は非常に強くなってきた。主要顧客である日本人の団体旅行が戻れば稼働率がさらに上昇し、コロナ禍前よりも高いパフォーマンスになるだろう。 日本のホテルは「インバウンドで盛り上がっているだけだ」とよくいわれるが、すべての施設が同じというわけではない。京都のホテルはラグジュアリーの価格帯が絶好調で、ゴールデンウィーク期間は宿泊単価が40万円に達した部屋もあった。
反面、中~低価格帯は課題に直面している。1室あたり2名利用でも2万円に届かない。特に低価格帯は供給過多で、ようやくコロナ禍前の水準を超えた程度だ。大阪でも低価格帯はやや軟調だ。一方で、東京はホテルの供給が多いにもかかわらず、観光客の人数も多いため需給が緩む事態にはなっていない。キャッシュフローに改善余地のあるホテルは、今後も取得していきたい。 ――ホテル以外で着目している案件は。 CRE(事業会社が保有する不動産)だ。これまでは資金繰りの観点から売却せざるを得なかった案件が多かったが、今後は資産効率を重視した戦略的な売却が増えてくるだろう。
アクティビスト(モノ言う株主)は日本企業に対して、企業価値向上を目的に不動産などの資産の売却を促している。この場合は通常の物件売買とは異なり、売却スキームの構築が重要だ。持ち分の一部を引き続き保有してもらったり、売却で得た現金を特別配当ではなく成長投資に回したりする方法も一緒に提案している。不動産の受け皿になるだけでなく、事業会社に価値向上につながる方策を一緒に提案する機会が増えている。 ■米国市場は底を打った