「日本の若者」は「倹約思考」? 将来への不安から浪費に走る「破滅的消費」…アメリカで社会問題化するムーブメントを専門家が解説
◆日本の若者は倹約傾向?
照英:アメリカでは若者が「破滅的消費」に走っているようですが、日本でも同じような現象は起きているのでしょうか? 塚越:日本も基本的にはアメリカと同じで、住宅価格や生活用品の値段が上がって、雇用や収入も不確実性が高いです。内閣府の「社会意識に関する世論調査」によれば、経済的なゆとりと見通しが持てないと回答した20~30代は、2022~2023年と大きく増加しており、物価高騰で若者の経済的不安が広がっていることは間違いありません。 一方で、日本の若者はアメリカの若者のような「浪費」に関しては、マクロな現象としては見られていません。先ほどの内閣府の調査でも、「将来に備えるか? 毎日の生活を充実させて楽しむか?」という質問に対しては、「将来に備える」と回答した割合が、若者を含めてコロナ禍後は大きく増加しています。 つまり、コロナ後の日本では、今より将来に備える「倹約傾向」が増えているということです。これは2008年の世界金融危機(リーマンショック)の後にも見られるもので、日本は経済危機に直面すると倹約傾向になる。これは何となく分かるかなという気がします。 照英:経済的不安に対する消費行動が、日本とアメリカで異なるのは、どうしてなのでしょうか? 塚越:まずは国民性の違いです。一般的に言われるような、消費が美徳と考えるアメリカと、貯蓄が美徳と考える日本の違いがあります。ただ他にも、コロナに関係なく日本はバブル崩壊後の長期低迷や、少子高齢化による不安など、さまざまな要因があり、アメリカ以上に日本は不安が大きいのかなと思います。 経済が不安だから破滅的消費が増えるアメリカと、倹約志向の日本だと、日本のほうが健全とも言えますが、消費が縮小し続けると国内経済も冷え込むことになります。消費を過度に抑制すると、さまざまな経験もできなくなります。 昨今は、特に子どもの教育に関して「体験格差」という、幼い頃の学校以外での体験の問題が指摘されています。子どもへの投資は倹約しないという家庭も多いと思いますが、20代などの大人になった後も、例えば海外旅行のような体験をする・しないで、体験に関する差が出てしまう可能性もあります。