都医師会、能登半島北部の地域医療の崩壊を懸念「医療ニーズが満たされるとは思えない」
東京都医師会は11月12日、都内で定例記者会見を行い、能登半島地震および奥能登豪雨による能登北部の現状について報告した。西田伸一理事は今年1月の能登半島地震の発災後、2週間目にJMAT(日本医師会災害医療チーム)として現地で活動し、現在も現地で知り合った開業医の医師の支援を続けている。 【写真】液状化が深刻な内灘町では、下水道が破損したまま外の仮設トイレを使用する生活が続く 能登北部の被害状況を「震災直接死(1月1日)が245人、豪雨災害直接死(9月21日)が15人で災害関連死は9月13日時点で149人、10月31日時点の申請数により218人になる見込みだ。熊本地震では直接死の約4倍の災害関連死があったということで、ここを何としてでも防いでいかなくてはいけない。11月1日時点で避難所生活をしている人が約600人いて、非常にアクセスの悪い場所で600人の方が避難所生活されていれば、当然医療へのアクセスも悪くなることが想像できる」と説明。 能登北部で稼働している医療機関数は、11月1日現在の能登北部医師会の調査で輪島市が病院1、診療所10、歯科9、珠洲市が病院1、診療所5、歯科1、能登町が病院1、診療所6、歯科5、穴水町が病院1、診療所4、歯科4だという。 「珠洲市は人口1万1501人の中に歯科が1カ所しかなく、オーラルフレイルの進行なども当然起こってくる。11月より珠洲市市民病院が分院を再開しているが、診療所と巡回診療どちらも月2回、それぞれ90分ずつで医療ニーズが満たされるとは思えない。人口でいうと能登北部は東久留米市の約半分だが、面積は約100倍、医療機関数は1/3。いかに医療過疎かということがよく分かる」と西田理事。
「能登の外浦と呼ばれる地域を回っているが、輪島市町野町と珠洲市大谷町あたりの豪雨災害の被害が非常に大きく医療が届いていない。珠洲市内の断水状況を見ると復旧時期が未定というところが非常に多い。9月29日時点の町野町は川ががれきで完全に遮られ、そこから水があふれ出して大きな被害を受けた。もともと先生のご自宅と寺院があったが震災で倒壊し、仮設の診療所を建てたところに今回の豪雨で流されてしまった。先生は毎日重機で泥かきをして、それを土のうに詰めて軽トラックで運び出している。つまり医療活動は十分に行えていないということだ」 11月3日時点でもがれきはそのままで、豪雨によって崩落した道路もそのままだったといい「現地の課題は被災地医療から超高齢過疎地の医療に移行しつつある。これは東京都にいずれ訪れる2050年の超高齢化社会に向けた課題と共通しており、医師会としてはこれ以上医療離脱や災害関連死を絶対に増やしてはいけないし、たとえ少数といえども医療に窮している地域を見捨ててはいけない。そして、災害によって壊された地域医療の再建に向けた支援をできるところがすることをやっていかなければいけない」と訴えた。 尾﨑治夫会長は「DMAT(災害派遣医療チーム)やJMATの派遣が終了し、報道などでも能登半島地震の被災地の復興は順調に進んでいると考えられていることが多い。しかし、実際は奥能登と呼ばれる能登北部は今もアクセスが困難で、復興が遅れていたところに奥能登豪雨でさらに打撃を受け、厳しい状況に置かれている。西田理事は何度も現地に入っているが、近いうちに視察して具体的に何ができるか考えていきたい」と見解を述べた。