都内の物件は「もはや手が出せない」 物価高に追い付かない賃上げ、遠ざかるマイホーム
実質賃金低迷、返済期間は長期化
全国の不動産価格の動向を示す国土交通省の不動産価格指数(マンション、10年=100)は、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」のもとで異次元緩和が始まった13年以降、右肩上がりに上昇。24年5月には200を超え、10年あまりで倍に値上がりした。戸建ても近年じわじわ上がり、足元では120近くに達している。 一方、物価の影響を差し引いた実質賃金(厚生労働省調べ)は、20年の基準(100)を下回る。08年のリーマン・ショック前の4月は109・1だったが、14年以降は100前後で低迷している。 そんな中、月々のローンの返済額を減らしたり、大きな額のローンを組んだりするため、借り入れの期間を長期に設定する人が増えている。
「年齢的に今しかない」。埼玉県越谷市の男性公務員(38)は、都内の小学校教諭の女性(28)との結婚を前に、住宅メーカーのポラスグループ(越谷市)の注文住宅(土地含め約7000万円)の購入を決断した。ローンは変動型の40年。完済は80歳近くになる。「35年ローンだと予算不足だった。40年かけて返すつもりはない。余裕のあるうちに前倒しで返済していくつもりだ」と語る。最近は50年ローンを提供するネット銀行も現れている。 住宅価格の上昇を見込んで、今のうちに購入したいという人もいる。 東京・池袋の住友不動産のマンション展示施設。会社経営の男性(33)は妻がもうすぐ出産予定で今より広い間取りを希望している。「子供のためにも資産を築きたい」と考え、35~40年ローンで1億円を超える新築マンションの購入を検討する。展示施設で働く渡辺健太郎さん(44)は「掛け捨ての家賃を払うのではなく、購入して資産形成を目指す若者が増えてきた」と話す。
金利2%上昇で月々の負担「4万円増」
日本の持ち家世帯率は長年6割前後を維持してきた。しかし、ニッセイ基礎研究所の福本勇樹上席研究員は「住宅価格の上昇に賃金上昇が追い付いておらず、いよいよ限界が来ている」と指摘する。働き方改革に基づく時間外労働の規制が強化される「2024年問題」を受け、大手住宅メーカー担当者は「人手不足で工期が長くなり、工事費が高くなっている」と話し、価格の上昇圧力は当面続く可能性がある。 また、金利上昇が続けば家計を圧迫する可能性もある。福本さんの試算によると、6200万円の住宅ローンを期間35年(変動型)で借りた場合、金利が0・4%だと毎月の返済額は15万8218円。10年後に金利が1%上昇すると、17万8506円、2%だと20万338円になり、およそ2万~4万円の負担増となる。