都内の物件は「もはや手が出せない」 物価高に追い付かない賃上げ、遠ざかるマイホーム
衆院選で物価高対策が大きな争点となる中、マイホーム購入を検討する人たちへの逆風が強まっている。原材料や人件費の高騰で住宅価格の上昇傾向が続くのに加え、変動型のローン金利は上昇が見込まれるのに対し、十分な賃上げが実現していないからだ。「物価上昇を上回る賃金上昇」。自民党政権が掲げてきた経済の好循環が実現しない中、暮らしの礎となる住まいをどう確保すればいいのか。 【図解で分かる】不動産価格、16年でどう変化?
手すりのデザインは「そのまま」で
「バルコニーの手すりのデザインはどうしますか。変更すると追加で30万~40万円かかってしまいます」 3連休中日の10月13日、川崎市に住むシステムエンジニアの男性(39)は住宅販売を手がけるオープンハウスのショールーム(東京都渋谷区)を訪ねた。既に購入を決め、設計士と図面を確認しながら具体的な作りを決めていく段階だ。予算内に収めるには、手すりに数十万円の負担増は痛い。設計士の問いかけに「結構です」と即答した。
ショールームは家族連れや20~30代の夫婦でにぎわっていた。キッチンや浴槽、外壁、カーテンなどの見本が展示され、この日だけで70組程度が訪問。実物を見て「妥協できる部分とそうでない部分」を見極めようとする家族が多い。 川崎市の男性は、派遣社員の女性(28)との婚約を機に住宅購入を決意した。男性の職場は東京都内にあり、都内の物件も検討の余地があったが、「もはや手が出せない金額」と断念した。 不動産経済研究所の調べでは、2023年の新築分譲マンションの平均価格は東京23区で1億1483万円。男性は「無意識に選択肢から外した」という。結婚式や披露宴は開かず、その分を新居の資金に回した。エアコン3台も、「メーカーによって約10万円高くなる」と設計士から言われ、薦められた安価な製品を選んだ。 一方、耐震性や断熱性にはこだわった。ほぼ全ての窓を断熱性の高い仕様にし、床の一部は重い家財に耐えられるよう補強することにした結果、400万円の上乗せとなった。 今後は内装や外装、キッチンの設備を決める予定だが、2人は「基本的に標準仕様を選んで追加料金を払わないようにする」と決め、土地と建物を合わせた予算は5000万円前後に収める計画だ。