都内の物件は「もはや手が出せない」 物価高に追い付かない賃上げ、遠ざかるマイホーム
ローン審査中に金利上乗せ
住宅購入者の資金繰りを支えてきたのが、長年続く低金利環境だ。三井住友トラスト・資産のミライ研究所によると、1993年以前にローンを組んだ人のうち、変動金利を選んだ人の割合は18・2%だった。当時は金利が大きく変動しており、金利上昇リスクの高い変動型を選ぶ人は少なく、固定型が主流だった。 ところが、00年代以降は日銀の低金利政策が長期化し、銀行は変動型の金利を固定型より大幅に低く設定。不動産流通経営協会の23年度の調査では、変動型を選ぶ人が82・8%に上った。 川崎市の男性もローンは変動型にした。だが、恐れていたことが起きた。 今夏、金利が最低水準のインターネット銀行で、借入額4900万円、返済期間35年のローンを申し込んだところ、審査中に適用金利が当初の想定より0・15%上がると知らされた。 お金を借りやすくする異次元緩和から一転、引き締め策を視野に入れ始めた日銀が7月末に政策金利を0~0・1%程度から0・25%程度に引き上げたため、各行がそれに合わせて変動型の住宅ローン金利を上げ始めたのだ。大手行にとっては17年ぶりの引き上げ。男性は「返済額が膨らむだけに気がかりだ」と不安をこぼす。借入額を抑えるため、ローンは男性だけで組み、金利上昇が続くようなら繰り上げ返済も視野に入れる。
「現役世代のための政策を」
金利負担が増しても、賃金が十分上がっていくなら問題はない。男性の給与は今春、約5%増え「今後も賃上げの波は続きそうだ」と考えている。ただ、現状は身の回りの物価高の影響が大きく、負担感は拭えない。共働きで自炊が難しく、食費は切り詰めにくい。「節約ばかりで今の生活水準をあまり落としたくない」のが本音だ。 政治には、現役世代に目を向けてほしいと望む。「高齢者向けの政策や低所得者への手厚い補助ばかりが目立つ。自分たちに響く政策がない」と男性は話す。社会保険料アップや防衛増税方針など負担ばかりがのしかかり、それに見合った恩恵を感じることはない。