プロデューサー・富山省吾が語るゴジラと「平成・VSシリーズ」の世界
――93年公開の「ゴジラVSメカゴジラ」(93年)はいかがですか? 「伊福部さんの新曲である冒頭のメインタイトル曲は、ファンから“度肝を抜かれた”と言われていて。脚本を担当した三村渉さんは、ベビーゴジラを作品に登場させて、怪獣の生命の絆をうたい、メカゴジラ=人間社会との対比を描いています。ラドンまでもが登場したのは、ハリウッドゴジラに向けてシリーズ終了が予定されていたためで、対ゴジラ組織Gフォースなどフィクション色が増し、戦いに参加する三枝未希(小高恵美)の苦悩が深まります。特撮では、ゴジラが初めて京都に出現しますし、何よりもラストのゴジラとベビーゴジラの見つめ合いが圧巻で、情愛あふれるゴジラの表情は川北特撮監督の快挙じゃないでしょうか」 ――「ゴジラVSスペースゴジラ」(94年)で、スタッフ陣が一新されパワーアップされたと伺いました。 「監督は山下賢章さん、脚本は柏原寛司さん、音楽は服部隆之さんと、スタッフが新しくなり『平成・VSシリーズ』の間奏曲も異彩を放ちました。山下さん&柏原さんがちりばめたアクションシーンを縫って語られる、シリーズヒロインの小高さんと橋爪淳さんの熱演による淡いラブストーリーも見どころなのです。ゴジラの敵、スペースゴジラは“悪魔的”ゴジラとして人気を博しましたね。バトルを繰り広げたのは福岡タワー周辺で、川北特撮監督の見せどころはモゲラと結晶体ミサイル。何より、川北さん好みのリトルゴジラが愛くるしい魅力を放ち、渋いオヤジキャラを演じた柄本明さんと好対照を見せました」
――時をへて「ゴジラVSデストロイア」で「平成・VSシリーズ」も終わりを迎えました。 「95年に起きた阪神・淡路大震災への鎮魂を込めて、シリーズ最終作として『ゴジラVSモスラ』などでお世話になった大河原さんに監督を、『ゴジラVSビオランテ』などでお世話になった大森さんにはと脚本をお願いして“ゴジラの死”を描きました。54年の初代『ゴジラ』への合わせ扉として、オキシジェン・デストロイヤーから生まれた怪獣デストロイアが出現し、さらには一作目のヒロイン・河内桃子さんも再登場されるのです。伊福部さんのレクイエムによって葬送されたゴジラの描写は川北さんが果敢にCGに挑戦し、特撮との融合で魅せた作品です」 ――「平成・VSシリーズ」の振り返り、ありがとうございます! 長らくシリーズの制作を手掛けられたのですが、近頃の「ゴジラ」ブームについてはどう思われますか。 「『ゴジラVSデストロイア』で『平成・VSシリーズ』が、2004年公開の『ゴジラFINAL WARS』で『ミレニアムシリーズ』が終了するのです。両シリーズが終わった後に誕生した、庵野秀明監督の『シン・ゴジラ』(16年)と、山崎貴監督がメガホンをとった『ゴジラ-1.0』(23年)は、両監督の作家性が作品全体に込められていて、創作への熱意と類稀なイマジネーションによるアート性も非常に高い素晴らしい作品だなと思いました。これからも、作家性の強い『ゴジラ』が生まれると期待していますし、予感も抱いています。ただ、近年の2作にはゴジラの『怖いけどかわいい』というゴジラの創作意図はあまり見られないのですが、それでも老若男女、国境を問わず世界で愛されているのは、ゴジラというキャラクターの持つ根源的な魅力によるものと言えるのではないでしょうか。今後も、新しい才能による新たな表現と装いをまといながら、ゴジラは愛され続けると思います」