「優秀な社員ほどその場でサインしがち」会社から早期退職を促されたときに注意すべきこととは
違法な労働をしていても、働いている本人は気づいていない場合が多い
――違法な労働を強制されている人の大半は、それが異常なことだと気づかない人が多いと言われています。 指宿昭一: 本当にそうなんですよ。まず気づかないし、気づいても弁護士に相談に行くというのはハードルが高いと感じる人がほとんどです。過去には「息子が過労で死にそうだから説得してくれ」と、お母様から相談されたこともありました。ただ、本人は自分が過労死しそうなほど働いていることに気づいていないんです。 他にも、ご主人が過重労働で自殺を図ったということで、お連れ合いから相談をいただいたこともありました。職場に泊まり込みで365日ほとんど帰らず、毎日机に伏せて3時間寝るみたいな生活をしていたそうです。結果的にその方は助かりましたが、病院で目が覚めたとき最初に言った言葉が「社長に申し訳ない」だったんですね。お連れ合いはすごく怒っていましたが、1週間くらい経つとご本人も自分がおかれた労働状況の酷さに怒りを覚えるようになって、最終的には裁判をすることになりました。 「この働き方は異常だ」ということが社会に認知されなければ、相談にも改善にも繋がりません。認知されるためには、個別の労働組合を作るなどして働く側が問題を意識しなければならないし、我々弁護士もメディアでの発信などを通じて、“労働環境の違法なライン”をしっかり伝えていくことが必要だと思っています。 参考: 早期・希望退職、1000人以上の募集が5社 実施規模の“二極化“進む 2021年1-10月上場企業「早期・希望退職」実施状況(東京商工リサーチ) https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20211112_02.html ----- 指宿昭一 暁法律事務所所長。筑波大学比較文化学類卒。44歳で司法試験に合格。2007年弁護士登録。労働事件(労働側)・外国人事件(入管事件)に専門化した弁護士業務を行う。外国人研修生の労働者性を初めて認めた三和サービス事件地裁・高裁判決、精神疾患に罹患した労働者の解雇を無効とした日本ヒューレット・パッカード事件最高裁判決、実質的な「残業代ゼロ」の賃金制度の違法性を確認した国際自動車事件最高裁判決などを勝ち取っている。 文:清永優花子 (この動画記事は、TBSラジオ「荻上チキ・Session」とYahoo! JAPANが共同で制作しました)